政治に携わり、徳を持ち、正義に与して長生きを続けた者(※)が居るだろうか?
居ないに決まっている。
しかし、私は私人としても卑しくも公職に携わった時でさえ、正義に対して譲歩したことはない。
そして私は私の弟子―と、誹謗者達がそう呼ぶのでそのまま使うが―に対して、報酬を求めたことは一度もない。
青年であれ、同年代の者であれ、彼らは自主的に私の背を追い、私に質問し、私は答え、私から問いかけられることを自ら望んだ者達である。
私は一度も授業をしたことも、授業を開く約束をしたことはないのである。
また、私が「青年を腐敗させる者」であるならば、その青年が自ら私を告発するべきである。腐敗させられた者がまだ少年ならば、その家族が私を告発するべきである。
その青年達が証人として今ここに居ないことが私の証人である。
名を挙げれば、
クリトン―私と同年輩かつ同郷の旧友。
リュサニヤス
アンティフォン
ニコストラトス
パラロス
アイアントドロス
そしてアディマントスはプラトンの兄である。
告発者メレトスは少なくとも演説中に彼らの名前を挙げるべきだった。
もし、彼が名前を挙げ忘れたならば、今 ここで挙げるがよい。
私は許可する。
しかし、傍聴の諸君は反対の結果を見るであろう。
彼らは私を援助しようとしているのだから。
メレトスやアニュトスの主張に従えば、彼らを腐敗させ、彼らの一族に禍(わざわい)をもたらすのは私であるのに。
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はい、冒頭の「政治に携わり、徳を持ち、正義を与し者」
この三つが揃って長生きした者は「居ない」と2400年前にソクラテスが言ってるのです(笑)。
もしかしてこれは、ヒーローアニメのいわゆる「正義の味方」に共通する
「正体を明かしてはいけない。」
に通じるのでは?と思います。
勿論、大切な友人や家族を、悪魔や悪の組織から守る為ってのもあります。
しかし、逆に言えば
「身内の利益の為に」
変身や魔法の力を使うことを避ける為でもあるのです。
また、新渡戸稲造は「武士道」にて
「アングロサクソンに『王の道徳』を説いても無駄なこと」
と述べています。これは西洋は権力者が横暴な事を揶揄し、日本の歴史に比べ道徳的でないと言ってます。
また、死に対して頑なソクラテスは、騎士道の基礎となったのでは?武士道には「死に恥」の文化があり、戦後、欧米にハラキリ文化が湾曲されました。