はい、現在五話まで掲載している「超訳・ソクラテスの弁明」ですが、難解とのご指摘を受けましたので急遽、物語の解説を入れさせていただきます。
哲学が誕生したのは、紀元前6世紀の古代ギリシャであると言われています。当時ギリシャは、地中海貿易によって莫大な富を得て、豊かになった市民達は
「宇宙や自然の根本原理は何か?」
を探る、知的な活動を始めました。
紀元前5世紀頃、それまでの君主制や貴族支配が崩れ、ペルシア戦争とあいまって、民主制を樹立したポリス(都市国家)では、政治は市民の手で運用されるようになりました。
首都アテナイでも、議会で法律や政策を決めたり、法廷で裁判を行うとき、市民の演説こそが決定権を握ったのです。
そんな時代に登場したのがソフィスト(徳の教師)と呼ばれる者でした。
ソフィストの第一人者プラタゴラスは
「人間は万物の尺度である。」
と述べ、「相対主義」を掲げ、人によって美しさの価値が変わるなどと主張しました。
また厳格な法律を求める側と、法の整備は神からの自然な姿から解離するとの考えが対立しました。
この様な背景から力を発揮するようになったのが弁論術でした。
弁論術の能力のみが突出すると、相手を言い負かすことや枝葉末節の論理に固執したりする手段が横行しました。
そんな時に登場したのがソクラテスです。
ソクラテスは広場での演説と対話を重視し、
「ゼウスでは無く雲が雨を降らせる」
の言葉が波紋を呼びます。
それをモチーフにした舞台当時のオーケストラに関する説明は過去記事でも上演され、無神論者とより一層言われ、告発される決定打となりました。
なお、当時の自然科学と演劇をモチーフにした私の小説はこちら
とにかく、有力者ほどソクラテスに「本当の知恵」を解き明かされることが驚異でした。
明日からは直接の弁論対決になります