卒業生代表 答辞
「春風が季節の変わり告げようとする中、私は今日、学舎を後にします。
きっとここで『学園の思い出』や『みんなとの思い出』を述べるのでしょうが、振り返っても思い出すのは『自分の思い出』ばかりです。
初めて校門をくぐった三年前、中学時代の『天敵』武田と、同じく中学時代の『憧れ』榎田が居ると知った時、我が校のサッカー部は全国も夢じゃないと本気で思えた。
でもそれは平坦な道のりじゃなかった。
学園への不満、大人への不満、社会への不満。
榎田や片倉と言葉を交わし、時には拳で語り、俺は自分の無力さを知った。
そんな俺の力を最後まで信じ続けてくれた三好先生、俺の進むべき正しい道を指し示してくれた教育実習の浅尾先生、怪我した時は優しく手当してくれた保健の神保先生、顧問として遠くからいつも見守ってくれた龍造寺先生、時には対立した意見を真正面からぶつかってくれた竹中先生、このご恩は一生忘れることなく感謝しています。
改革の志を胸に、私の学園生活の殆どは、生徒会長の腕章と、公私ともに私を支えてくれた副会長の内藤京子とともにありました。
学園の秩序を取り戻し、かつての仇敵とともにサッカーが出来る平穏な日々の中、私達は高坂瑞穂に出会いました。
女子ブンデスリーガ・フランクフルトに入団した彼女は、名実とも我が校のスターです。
彼女が学園にもたらしたのは優勝トロフィーだけではありません。
女子サッカー部を創設し、男子サッカー部も指導し、たった一年で全国制覇を成し遂げた彼女が残したものは、「飽くなき挑戦」の心です。
その魂は次世代を担う、結城翔子、柳生恵里菜、相良優矢、柿崎亮太に確実に受け継がれていると信じています。
君達のその雄々しい姿があるからこそ、私は今日、卒業出来るのです。
本音を言うならいつまでもここで仲間と一緒に居たい、社会になんて出たくないと思ってます。
それは、これほど素晴らしい学園生活以上のものが今後あるはずない、とおもうからです。
しかし、私を生んでくれたお母様、育ててくれたお父様は、何よりも私達の輝かしい未来を、私達以上に望んでいるのです。
それを学ぶことが出来たのは、我が愛する母校、北条学園での三年間の学園生活があったからこそです。
列席の先生方、ご来場の父兄の皆様、在校生諸君、私の答辞に同意してくれた卒業生諸君。
本当に今までありがとうございました。
卒業生代表 真田正行」
(完)