2月14日(金)
「あ、あの竜…。こ、これ…ウチからの気持ちや…。
受け取って…。」
あかん、何でこんな簡単なこと言うだけで顔が熱いんや!?
インフルエンザなんか?
「気持ちってどういう気持ちだよ?
それがわかんなきゃ受け取れねーよ。」
ア、アホ…!何でそれを男の方から聞かれなあかんねん!
言えるわけないやん…。
あんたはどうせ他の女子からぎょーさん本命チョコ貰ろうとうクセに…!
「…えと…その…竜はまだ一年やのに、女子サッカー部を熱心にコーチしてくれたから、女子部を代表して…。」
口から出任せにもほどがあるけど、ウチは嘘は苦手や…どうしよ…。
「そういう理由なら要らねーよ。
持って帰れ。
女子部からの『お礼』ならさっき伊達姉さんの方から『これからも頑張ってね♪』って渡されたから、同じ目的なら美空からも受け取れねーよ。」
「…ごめん…。
時間取らせて…ごめん…。」
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2月15日
「で?
涙をこらえながら、去り際に赤松くんをグーで殴ってきたんでしょう?
すっきりしたんならもう諦めなよ!」
「ツネちゃんに言われとうないわ…。
竜に断られたんがショックやのうて、まどかがまさかウチらに内緒で抜けがけするなんて…。
竜を視る目が怪しいなとは思うとったけど…。
それより、ツネちゃんのがチキンやないか?
安国寺くんに結局渡せずじまいやったやんか?」
「だって目の前であんなシーンを…。」
徳川実業一年生の安国寺慶太くんは赤松くんと幼なじみです。この夏に全国制覇したけど、それ以来目標をなくしてサボりがちに。
オランダリーグ入団の交渉がまとまらないのが原因です。
それで何となく親友が居る、我が北条学園の男女チームを臨時に指導してる間に、私こと吉岡常子は彼に思いを…。
コーチ役のお礼にバレンタインのチョコを渡そうとしたら…。
昨日
「竜!他の女からバレンタイン受け取ってない?
僕からの手作りチョコしか受け取っちゃ駄目だよ!」
なんてシーン目の前で見せられたら誰だって寝込むわよ。
まぁ、それで傷心の二人して学校サボってケーキ屋でヤケ食いなんだけど…。
美空ちゃんたら今まで安国寺くんの存在を知りながら赤松くんへの思いをよく維持出来てたわね。
でも、美空ちゃんは一つ勘違いしてるかな…?
「ねぇ、まどかちゃんは『安国寺くんとBL頑張って』って意味だったんだよ。
だから月曜にもう一回正直に告白しよ?」終