ルシファーさんの人格は一切、魔界にも魔王軍にも関与してない。
だから彼女が天界に帰還を望むのは当然だった。
「宮仕えの私でいいのですか?」
「それも含めてミカエルという存在だとわかっています。
それにヤハウェへの想いは私の分身のサタンが代わりにやってくれますから(笑)。
私は天界よりも魔界よりも、ヤハウェの傲慢を質すことよりも…。
ミカエルの傍に居たい。
どうしてこんな簡単なことが…。」
「サタン殿が人間界に来て変わられた様に、私も貴女も有限な人間の影響を受けたからかもしれませんよ。
ヤハウェには『力』よりも『対話』で貴女の復帰を進言しましょう。
なぁに、今回のロストファイブの件で論功の代わりに奈々子殿の切り離しを嘆願します。」
(ちょっと、ルシファーさん大丈夫なの?
お役所仕事でうん百年待たされるとか無しですよ?)
(その時はホントにハルマゲドンを起こしましょう♪
今度は私がミカエルを斬りますから♪)
(やめてください!私はあくまで人間の精神と肉体なんですからね!)
大円団の中、その足で天界へ向かおうとするミカエルさんとルシファーさん。
その時、フクロウが星明の前に現れ…。
「サタン様、パイモンからの伝言です!
ネット住民の一人が『ASMOのネット中継を妨害したのはアジアン雑貨に務める落合奈々子という女性だ』との書き込みが…。」
「本当か、バティン?」
「はい、ホームページには奈々子様が初詣に神社に参ることが書かれてましたので…。」
「くっ…。『怒り』に我を忘れた人間め…。当の奈々子さんが居なくとも、流言を信じて混乱が生じるな…。
バティン、神社に向かうぞ!余が鎮圧してみせる!」
「サタン様、たまにはこのバティン以外の『乗り物』はいかがですか?」
と、その時、空からシャンシャンシャンと鳴る鐘の音と共に無人のソリが…。
「瞬速のバティンはライヴの時間中に北極を行き来するくらい御安い御用です。『娘』の晴れ姿を見たくない親は居ないと思いまして。」
「バティン、つくづく出来た配下だお前は…。」
ソリを引く9頭のトナカイは間違いなく元天使で星明とルシファーさんの親だった。
先頭のルドルフさんは有名な「赤鼻」です。
「ルシファー、サタン、久しいな。
ワシらのことは気にするな。
北極も悪くないぞ。い♪」
「サンタのソリで神社に向かう魔王。
シュールね。」
「元々シュールな物語さ!」完