「ルシファー…。」
「ミカエル…。
ずっとこの寒空の中、外で待っていたのですか?」
「ええ、最初は中に入れない方達の恨みと怒りを抑えるだけでしたが、彼等の気持ちに耳を傾ける内に、彼等も私が話す神の祝福について耳を傾けてくださいました。
「ライヴ中延々と外で演説してたのですか?
炎属性の貴方らしい。
ウリエル姉さんもそんな貴方に惹かれたのだと思います。
貴方の姿が何よりも薬となるはずです。」
(ちょっとルシファーさん!他の女はいいでしょう?
決着を着けなきゃ!2552年のわだかまりを…。)
(そんな…聞けないですよ奈々子さん…。
私はミカエルに右手を斬られた存在です…。
アビス(奈落)に堕とされて当然の堕天使なんかが、最高位の織天使(セラフ)に昇格したミカエルに何を話せと…。)
(あぁ、鬱陶しい!どこかの年下イケメンじゃあるまいし!
これからこのルシファーさんと意識を共有して行くの?
早く天界のヤハウェに切り離してもらうように直訴しないと…。)
「ルシファー、ミカエル殿は2552年間、休みの度にお前が覚醒してないかと魔界に足を運んでいたのを知らぬわけではなかろう?
サタンとしての余の意識の中で、誰よりもお前を想い続けたこと!」
(星明って、天界と魔界のことになると三倍カッコイイ…。
今更ながらホントに悪魔なんだね…。)
「そしてミカエル殿もだ!
何故、余を!イヤ、ルシファーを斬った心意を隠し続ける!?」
ドーム前の広場に星明の『怒り』の声が響く。
彼自身が罪に堕ちるのも辞さない覚悟だわ。
「私が何を言おうと、最愛の者をこの手で斬ってしまった罪は消えませんから…。」
「ええい、本人に漸く再開出来てもまだそんなことを!
ルシファーよ!お前がヤハウェに弓を向けた時、既にヤハウェは我々を創造した9天使の命を握っていたのだ!
ミカエル殿にはお前を斬り、アビス(奈落)に堕としてでも命を繋ぐしか選択肢はなかったのだ!
だから余は復讐の為に、魔王軍を組織し、奈々子さんを求めて人間界に来た!
全ては戦後にトナカイにされた9天使の解放が目的だ!」
「サタン殿。
私はそれほど清らかな天使ではありません。
そして私は今もそのヤハウェの部下なのです。」
「ミカエル、そうだったのですか?
私が憎くて、魔界まで追って来てたのではなかったのですか?」
「当然です!
ルシファー、天界へ還りましょう。」
「喜んで…」