12月31日 20:58
「奈々子さん、遂に貴女の力を借りる時が来ました。
もう、この方法しかありません。」
「信じてるわ、星明。」
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ライヴの最大のイベントが遂に始まった。
2014年のカウントダウン。
星明は観客の「意思」が統一されるこの時が最も危険だと予測した。
そしてそれを防ぐには「ゼロの唱和」の前にこちらが手を打つしかなかった。
「10」
「9」
「私はどうすればいいの?」
「何もしなくて構いません。
ただ私と同じ気持ちで居てください。」
「そんなの当然じゃない。
愛してるわ…私は消えない!」
「8」
「7」
『来れ!第6の罪「傲慢の魔王」ルシファーよ!』
「6」
「5」
重ねた星明の口唇からパワーというかエネルギーが私の体内に流れ込むのがわかる。
ステージ上から私達を確認したASMOちゃんは舞台袖のベルフェゴールくんに合図を送り、会場が闇に包まれ、彼女のマイクがオフになる。
これが魔力?ううん、私は愛そのものだと思う。
「4」
「3」
私自身がまばゆい光に包まれたと感じた時に、私の意識は深い奥底に眠った!
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「何これ?」
「サプライズイベントって奴?」
「凄い光!」
突然の出来事にドーム内はザワついたが、どこか整然としていた。
それは煌めく光と、12枚の翼を持つ『魔王』いや、『天使長』がステージに降臨したことへの畏敬だった。
「…久しぶりですね…アスモデウス。直ぐに貴女とわかりました。」
舞台に上がり、傍らにいるアスモデウスにしなやかな笑顔で声かけするルシファー。
召喚は成功だ。
そして沈黙を破ったのは…。
「ハハハ、大成功だ!カウントダウン終了前に召喚された時は驚いたが、僕は遂にやった!
バハムートの召喚に成功したぞ!
ASMOちゃんのマイクに召喚を促すプログラムを入力し、55000の観客の意思が統一されるこの時を狙ってたのだー!」
興奮のあまりステージに上がってきたスタッフ。
長い棒状のマイクを持ち続けたので音声さんと言う奴か?
とにかく「珊瑚」の残りの片割れ「瑚」が尻尾を出したのには間違いなかった。
「マルバス、貴方が直接手を下してなくても、かつての仲間が死に、貴方の技術が悪用されても、人間の精神の中に隠れ、『技術供与だけ』を言い張るのは『傲慢の罪』以外何物でもありません。消えよ、己の罪を悔いよ!」
トチ狂う男に手をかざす。