リョウシン~テッペキ!ショートストーリー | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
あなたの今日が価値ある一日でありますように

「おば様、何から何までありがとうございます。」

「こんな高級な着物眠らせてるなんて、勿体無いわ恵里菜さん。」

年越しは恵里菜の家に、妹の麗美と弟の草太と三人で泊まりに行ったから大騒ぎだった。
去年はウチに呼んでくれたお返しだからと、麗美と草太も誘ってのお泊まりとなった。
朝になり母さんが到着し、麗美と草太を迎えに来ると同時に、恵里菜に振袖を着付けてあげた。
二年連続で二人きりの年越しを「お預け」された俺だけど、薄いピンクに所々花柄の入った着物姿の恵里菜を見れたら、そんな気持ちなんて吹っ飛んだ。

「母さん、ありがとう。
じゃあ、そろそろ行こうか?」

仲間達と初詣の待ち合わせをしている。みんなこの恵里菜の姿を見たら驚くぞ。
「え~、もっと恵里菜お姉ちゃんと一緒に居る~。」

「わがまま言わないの草太!聞き分けない男は彼女出来ないぞ?」

草太は麗美より年上のお姉さんとして恵里菜に甘えてるだけと思いたいけど…。

「彼女なんて要らないよ!だって恵里菜お姉ちゃんと結婚するから。
俺、クラスで一番背が高くて、頭もいいんだぜ。」

「私もまだ五年生だけど、そろそろ膨らみだして大人の身体になってきたのに、お兄ちゃんだけいつまで経っても小さいよねぇ~。」

…弟の草太が将来のライバルにならないことを願うばかりだ…。
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「賑やかな家族でごめんな。」

「ううん、優矢くんのおかげで私、クリスマスもお正月も一人ぼっちでなくなって感謝してるよ。」

恵里菜の父親はブラジル、母親はヨーロッパでのニューイヤーになったそうだ。
クリスマスプレゼントに高級な振袖だけが宅配荷物で届いたことに、普段穏やかな恵里菜も激昂してた。
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「こんなの要らない!
子供が何歳になっても、高い玩具を与えたら気持ちを繋ぎ留めれると思ってるんだから!
秘書に選ばせた振袖なんて着たくない!
どうせクリスマスも年越しもその秘書と…。」

「やめろ恵里菜!子供の俺が大人の事情をわかった風に言えないし、『両親が居さえすればいい』って考えには反対だ!
でも…。」

「でも…何?」

「俺は恵里菜の着物姿が見たい。
だから送り返すのはもう少し待てよ。」
「…大好きだよ、優矢くん。」

「俺も恵里菜が好きだ。
着付けは母さんに頼めば大丈夫だからさ…。」

「優矢くん…私達だけは、ずっと一緒に居ようね…。
急にこの着物に愛着湧いたわ。」

『メリークリスマス』