東京に着いたころには夜になっていた。
「鍵が開いてる?」
蒼磨様にしては不用心な…。
ドアを開け、中に入り驚愕した。
「貴様は!?」
思い出したくもない忌まわしい記憶。
私の中に憎悪という感情は、この女にしか抱くことはない。
「待ってたわ。
南部彩。」
「何故、東京の蒼磨様のアパートに一人でいる?
蒼磨様は何処だ?」
「う~ん?そうい関係だからよ~。」
「妄言を吐くな!
消えろ!
奥村佳代!」
かつての蒼磨様の許婚が東京にまで!
いつからだ!?
どこまでの関係だ!?
いや、仮に事情があるにせよ、部屋主である蒼磨様が居ない状況で、私を待ち伏せするなどそれだけで万死に値する!
女との間合いを詰め、胸ぐらを掴み、掌打を軽くお見舞いしてやるつもりだった。
素人には丁度良い懲らしめのはずだっだが…。
「様を付けんか!召し使いが!」
「ガハッ!」
腕を掴まれて一回転したのは私の方だ。
何者だ?この女?
「あらあら、玉蹴り遊びばかりで、すっかり錆び付いたみたいね。そんなんじゃ、一橋家次期当主の護衛失格よ。」
何故、こんな女がここまでの技を。
「奥村家の女として宗家三好流柔術を習ってて良かったわ!
ふん、所詮、木刀か竹刀がなけりゃクズ女ね。」
衝撃で一時的に身体が麻痺してるが口は動く。
「蒼磨様をどうした?」
「私のアパートで待ってるわ。
蒼磨くんは、私にあなたとの別れ話を任せたのよ。」
「そうか…ならば何故、この暑い夏にエアコンは動いてて窓が開いてる?何故、玄関に貴様の靴がない?
了承なく忍びこんだな!ストーカー女
隠し場所は押し入れか?」
「あんたには関係ないのよ!もう動けないクセに!
私の蒼磨くんを奪った罪は、あんたの裸の写真で…。」
カメラを片手に私の服に手をかけようとする。
苦悶する私に顔を近付けたが、そこに隙があった。
「ンー!
何するの!いきなりキスするなんてこの変態女!」
最後の力を振り絞ってこの女と口唇を重ねた。
勿論、口移しで薬を飲ませる為に。
「南部家の女として、辱しめを受けた時の覚悟はある。
口腔内の小袋に自害用の猛毒を仕込んである。
貴様も道連れだ!」
「ウソ?助けて!」
「無駄だ。四肢が熱いだろ?直に自由がなくなる。」
「イヤー!」
ふらつきながら逃げ出したか。
ハッタリだ。蒼磨様と夜を楽しむ為の強精薬が役立つとは(笑)
島さんを非難出来んか。終