「レビアたんと『防水』の契約をした為に、サミアちゃんの『真名』を奪われたのよ…。なんて酷い女!私達に親身なフリしてやっぱり悪魔だわ!」
絶望的な状況に変わりなかった。
サミアちゃんに尋ねても思い出せないし、サミアちゃんが過去を詳しく話すことは禁止だった。
そもそも、僕達三人がサミアちゃんを視ることが出来るのが奇跡だし、人間なら役所や新聞からの記録を調べることが出来るんだろうけど…。
「どう?燿子ちゃん?」
「駄目、契約をした明治8年から16年ごろを調べてもそれっぽいニュースは無いわ。
勿論、知られてたら、お爺ちゃん、お婆ちゃんから聞かされるし、教科書に載るわよ。
妙子ちゃんの方は?」
「『サミアッド』『砂の妖精』で検索しても、児童書やアニメ



がヒットするだけで、サミアちゃん個人に関することなんて…。」
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夜も遅くなり、台風はすっかり抜けた。
いつまでも妙子ちゃんの家にお邪魔するわけにはいかなかった。
サミアちゃんは妙子ちゃんの家のソーラーハウスに置いて家路に着いた。
家でも可能な限り私は検索に費やした。
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「お母さんを追い出すなんて酷い!
私はお母さんと暮らすもん!」
「燿子、お母さんが帰って来るまではお姉ちゃんと暮らそうね。
お父さんにはもう、新しいお母さんが居るからさ…。」
「慶子!燿子はまだ幼い!私が責任を持って…。」
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気が付けば同じ夢。
お父さんもお姉ちゃんも、私に気を使って、先にお母さんが男を作って出ていったことを秘密にしてたのが痛かった。
お姉ちゃんは口を開けばお父さんの悪口ばかりだけど、再婚を邪魔しない為に離れたんだと思う。
最近ではお母さんの名前も忘れがちだわ…。お母さんが私を「燿子ちゃん」と呼んでた笑顔をさえ…。
名前?呼びかけ?そうだわ!
夜中の迷惑を気にせず、賢司くんの家に電話する。
「賢司くん!サミアちゃんにビスケットをあげた明治の新聞記者さんが鍵よ!彼がサミアちゃんを何て呼んでたか?もしくは日記とか記録があるかを調べるのよ!」