一学期の頃
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「燿子さん、やっぱりこういうことは…。」
「駄目よ、妙子(たえこ)ちゃん!
どこかではっきりノーを突き付けないと。
大丈夫、何かあったら私が相手してやるし、山南先生ならわかってくれるわ。」
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「一昨日の宿題は質、量ともに大変だったろうが、皆良くやった方だ。
但し、阿部、宮国、菅野、村田、杉内。お前達五人の解答は宮崎の正答と誤答と全て一致してるのはどういうことだ?」
(山南先生、それは燿子さんがわざと幾つか間違えろって燿子さんが…でも、どうしよう、ホントのこと私、言えないよ…。)
「え~先生、そんなの偶然ですよ~。」
「偶然じゃありません、山南先生!
阿部さん達はいつも宮崎さんの答えを丸写しして提出しています!
だから私が宮崎さんにわざと幾つか間違えてから阿部さん達に渡せって言ったんです。」
「栗原さん!私達そんな悪いことしてません!勝手なこと言わないでください、迷惑です。」
「山南先生、私も森崎くんも知ってます。阿部さん達はいつも宮崎さんに…。」
「静かに!
連帯責任だ。
クラス全員明日までに問題集25ページから30ページまで仕上げて提出すること。」
「何だよ、先生!それ女子の問題だろ!」
「連帯責任だ。
則本、君だけ倍の課題がやりたいか?」
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「栗原さん、余計なことやってくれるじゃないですか?
私達と宮崎さんの『友情』に今後口出ししないでくれません?」
「燿子さん…。もう…私はいいから…。」
「妙子ちゃん、心配しないで。群れてないと何にも出来ない子に私、負けないから。
妙子ちゃん、明日からは私とだけ友達になろ?」
「燿子さん…。」
「さぁ、来なさいよ!私はトラック運転手のお姉ちゃんに毎日鍛えられてんだからね!」
「あんた前からムカつくだよ!目障りよ!」
「こっちのセリフよ!」
「ジリリリ!」
「そこまでだ!火災報知器のボタンを押した!
女の子の取っ組み合いなんて醜いよ!
みんな僕と一緒に先生に怒られるんだ!」
「私達、何もしてません!森崎くんと栗原さんが勝手に…。」
「連帯責任だ。
宮崎、こうなりたくない原因をお前自身が考えろ。」
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あれから5ヶ月。あいつらは妙子ちゃんを相手しなくなったのは良かったけど…。
「賢司くんも昨日テッペキ!観てくれたんだ?良かったねぇ、妙子ちゃん?」
でも妙子ちゃん…どうしよう?