
は「児童文学の母」と呼ばれ、
作中の中で語られる「願いが叶うこととは?」の問いかけは、あのJ.Kローリングも影響を受けたという。」
「サミアちゃん、ハリーポッターにも詳しいんだ?」
「捨てられた新聞や本を読むのがワシの趣味じゃ。どうせ誰もワシに気付かん。」
「でも、『願いが叶うこと』に問いかけた作品は、もう一冊あったんだよね?」
僕は昨日の検索結果の核心をサミアちゃんに伝えた。勿論、望んで探しあてたわけじゃないが。
「少年よ、一晩でそこまで調べるとは…。文明の利器にも頭が下がるが、お前の情熱にも感服するわい。
まぁ、話は長くなる。
スコーンでも食べながら話そうではないか?
ワシの奢りじゃ。」
サミアちゃんは白くて小さな手の平から美味しそうなスコーンを僕達に差し出した。
「ねぇ、これって?」
燿子ちゃんは怪訝そうな顔をする。
当然だ。
「あぁ、勿論、ワシが石を魔法で変えたものじゃ。
大丈夫、日没を過ぎても腹の中で石に戻りはせんわい。」
「ホントに?」
「ワシに取って食事は楽しむ為だけのものじゃ。
キリストが頑なに石をパンに変えずに、悪魔の誘惑を断ったのはワシに言わせれば愚かものじゃ。
出来るならやればよい。」
僕は差し出されたスコーンを食べた。美味しそうだから以上の理由はない。
燿子ちゃんも続いて食べて満足している。
「続きじゃ。
奇しくも同じ1902年、ウィリアム・ジェイコブズは『遊覧船の貴婦人』の中の『猿の手』を発表した。
モダンホラーの原点と言われるこの傑作は、猿の手のミイラが三つの願いが叶えてくれるが、叶った以上の代償を払ってしまうと言う話じゃ。」
そして僕はサミアちゃんに聞いた。
「でもそれは、『猿』じゃなかったんだよね?」
「その通りじゃ。ジェイコブズは『砂の妖精・サミアッド』の手を、猿の手として作品を発表したんじゃ。」
スコーンに夢中だった燿子ちゃんも驚いた。
「確かに、仮にお猿さんのミイラがあっても願いが叶うわけない!
でも、目はカタツムリ、蝙蝠の耳、クモのお腹、そして猿の手と足のサミアッドのミイラなら…。」
「ポルトガル、スペインに100年遅れて外洋に出たイギリスが七つの海を支配したのは…。」
「住む家を失ったサミアッドに願いを無理強いしたから」