「そんなぁ、恵さんの目の前で、旦那様の大魔王と一緒に葬るなんて…。」
困惑するジャスティス。
当然だわ。でも、確かに可能性を考えたらこれしかないのかもしれない…。
「さやかさん、聞いてください。
気持ちが優しく、元来戦闘に向いていない京子や柳生さんには到底無理です。
瑞穂さんと南部さんも、身体能力はあっても、情に流されやすく、この様な非常な決断は出来ません。
でも貴女だけは違う。
今、ここで雷槍を投げることが、天使と一般人達の命を救うことに必要な選択と解るはずです。」
敢えて本名で呼ぶ将軍。
それはジャスティスの、いえ、さやかちゃんの本質を見抜いた的確な判断だった。
彼女は以前、勝利の為に敵味方無差別の雷攻撃をしたことがある。
成績優秀で感情に流されない『アイスドール』のさやかちゃんが要求されている。
それに結界の中にはさやかちゃんの双子の姉、まどかちゃんが居る。片倉先生や相良さんの妹の麗美ちゃんも居るけど、誰よりも守りたい想いが違うはず。
****
「あー!ぐぅ…。はっ、もう駄目…。」
「ガブリエル、弱音を吐かないで!
トール神のトオルさんは、オーディーンという部下を失えば、管轄地の北欧は激務になるわ!
貴女と貴女の子が支えなくてどうするの!
ミカエルさまもルシファーも貴女の子を楽しみにしてるわ!」
「ウリエルの言うとおりです。
トオルさんとの子は、前夫ヤハウェとの子、ジーザス・クリストの転生とは限らないです!
ガブリエルは母として、この子をこの子らしく産んで、愛するです!」
「ラファエル、ウリエル…。」
「天使さま、丈夫な子を産んでください!」
「麗美ちゃん?」
「天使さまはいつも私達を見守ってくださるから、私達も天使さまの赤ちゃんを期待しています。
私達には祈ることしか出来ないけど…。」
「その子の言うとおりだ。
大谷先生、最上先生、恵先輩、結城さん、まどかさん、祈ろう。
このとんでもファンタジーを検証するのはその後だよ。」
「片倉先生…。」
「あたしだって、この亜空間が壊れないように戦ってるだからね、頑張りなさいよ!あんたあたしの『お義母さん』なんでしょ!」
「デザイア…。」
****
「将軍、みんな、私やるわ!」
『さやか』
「だから、みんなも力を貸して。同時に魔力を槍に添えて」
「わかったわ。」
「いけぇー!見よう見まね、『轟渡る雷槍の投擲』(グングニル)」