「曲がりなりにも『神』相手に勝てるとは思ってませんよ。」
身体の中心に槍が刺さり、倒れたままのナイトメア将軍が作戦の内情を明かす。
「それでは貴様等は最初から雷槍(グングニル)を奪うのが目的で…。」
かつてないほどの狼狽を見せるフレイア。
「ええ、この中の誰もが貴女を倒せる力を持ち合わせてはいない。
だからこそ、貴女を倒せるのは貴女が操るこの槍しかないと思ったんですよ。
多少、無茶な賭けでしたが…。」
「まー君のバカ!身体に穴を開けてまで囮になることないでしょう?」
「いえ、こうでもしないと、『闘神オーディーン』の隙を見つけることは出来ません。
さぁ、アイアンジャスティス。
準備は整いました。雷属性の貴女ならグングニルを扱えるはずです。
早く私の身体か『新武器』を引き抜き、フレイアを倒してください。」
「わ、私が…。」
突然の大役にジャスティスが戸惑うのも無理はない。
でも…。
「ジャスティス、お願い、今こうしてるだけでも真田さんは苦しいし、一人であいつを押さえてる大魔王も、いつまでも持たないわ。
せめて早く槍を引き抜いて。」
ナイトメア将軍、真田さん、まー君。
呼び方なんてどうでもいい。
私の大切な人が無事でいて…。
「わ、わかりました。私はやれることをやります。」
決意の眼差しで彼に刺さった槍に触れようとするジャスティス。
でも…。
「あぁ、言うまでもないと思いますが、手の平に電撃魔法を溜め込んでから握らないと、いくら貴女でも感電…。」
「ビリビリ!!」
「痛~い、痺れた~!ピリピリする、ピリピリするよ~。もう!大事なことは早く言ってよー!」
ジャスティス、敵の武器に不用意過ぎでしょ…。
「はい、以前、私にお見舞いした『雷鳴拳』を放出した状態で槍を握るのです。」
「ホントだ、今度は大丈夫だ、じゃあ、抜きますね…。
エイ!」
引き抜かれた途端に、私達と同じ赤い血が溢れる。
「さぁ、ジャスティス。チャンスは一度です。
大魔王様ごと、相手の心臓を貫くのです!」
将軍が明かした衝撃の作戦。
大魔王もジャスティスの様子を見て体勢を変える。
「正義の戦士よ。構うな!
さぁ、私の心臓の位置が丁度この女の急所と同じだ!」
死を覚悟していたのは大魔王も同じだった。
「さやかさん、私は雷属性だから貴女を指名したのではありません。
この中で唯一、非情に割り切れるのは貴女だけです。」