「天上界」
それは人間が考えるよりも遥かに理性的で秩序立った、途方もなく退屈な世界です。
天界の業務は大きく二つに分かれ、地上と人間に関わる
「創世省」
と、天上界を維持、管理し、天界に楯突く者を排除する
「天務省」
に分類されるです。
前者の代表が創世省筆頭審議官ヤハウェです。
後者の代表が天務省参事官ゼウスです。
勿論、「代表」とは人間が知っている名前であり、彼ら以上に高次の存在により世界の調和は保たれているです。
私達は「四大天使」と呼ばれていますが、それはあくまで職務上に人類に関与しただけで、決して私達とヤハウェで天界を維持管理してるわけではないです。
ガブリエルは創世省「啓示課」
私、ラファエルは「守護課」
マキはウリエルで
「慈悲課」
もう一人
「伝導課」
のミカエルは別事件で潜入捜査に当たってるので、今回、北条町には来てないです。
現在、私達の眼前に現れたのは、天務省・対魔課北欧主任のオーディーン。
天界に背く悪魔退治を主とする対魔課が何故、地上に?
それに北欧はガブリエルの旦那さまで、お腹の子の父親トオルが係長を努めているはず…。
まさか、勅命といいながら、私的にガブリエルとトオルの関係に関わるのでは?
もしそれで罪無き人間に被害が及ぶなら、守護天使ラファエルとして放ってはおけないです。
「啓示天使ガブリエルよ!
評議会は、貴女の更迭を指示した。
『ユダの再降臨』に関する一件は我々『対魔課』に一任された。
下がってなさい。」
「オーディーン、待って!
それはトオルも同意したの?お腹の子は?」
「…私に答える義務は無い…。
私はただ関係者を滅することを命じられた。
『裁きの轟雷』」
アイアンジャスティスの「裁きの雷」の上位呪文を何の躊躇もなく…。
「待つです、オーディーン!
ここには一般の幼稚園児や女子中学生がたくさん居るです!こんな極大呪文を使えば巻き添えが…。」
「私は『関係者全て』と命ぜられた。
バンパイアやインキュバスと宴を楽しむ人間達の命なぞ知らぬ…。」
天務省出身は人間を軽視する傾向が強いですが、この女、オーディーンのフレイアはその典型です。
「ガブリエルは今、貴女の上司トオルの子を授かっている大事な時期です!
それに人間への神罰は審判課を通すです!」
「人間もガブリエルも妖怪の犠牲になった。いいシナリオだと思わんか?
これで私はトオルさまと…」