もうすぐ北条祭の季節です。
体育祭と文化祭が融合したこの一大イベントは、北条女学園の生徒の命運を握っています。
だって…「陸の孤島」と呼ばれるウチの生徒達が、数少なく他校の男子に出会える場なのですから…。
みんな気合い入りまくりで出会いを求めるのですが、実際はいろいろと規制があり退屈なお祭りでした。
内藤京子生徒会長も従来通りの厳粛なお祭りを推進してたのですが、去年、北条祭の実行委員長に、陸上部の島敦子さんという方が就いてから、一気に楽しいお祭りに変わったのです。
近隣の学校や商店街に協力を求め、男子との出会い以上に、触れ合ってお話し出来る機会が激増するドキドキイベントを多数採用してくれたのです。
去年は失敗したけど…今年こそは、私、柳生恵里菜も彼氏作りに成功したいです!
「君、聞いてる?」
「ご、ごめんなさい!」
で、今日、私達は学校の近所のクレープ屋さんの「アルケ」に北条祭への出店依頼と、クレープ作りの体験をさせて頂くことになりました。
京子先輩の権限で私達テッペキ!戦士達だけで来店したのは秘密です。
「おい、優矢!ちょっとお客さん増えて来たから、お嬢様方の相手はお前がしろ!
悪いな、さやかちゃん。」
アルケの出店を熱烈に希望したのはさやかちゃん。
「ええ?もっとマスターに教えてほしいのに~。」
「大丈夫だよ、優矢の腕は確かだから。
君達が可愛い過ぎて勘が狂うかもしれないけどな。」
と言って店のマスターは、クレープ作りの指導を、少し小柄な店員さんに任されました。
「やめて下さいよマスター。
料理に愛情は注ぎますが、私情は挟みませんよ。
とりあえず手本を見てくれ。」
「うわぁ、上手~!」
鮮やかな手つきで生地を薄く広げ、ふんわりと仕上げる優矢さん。
「大切なのは思い切りとタイミングさ。じゃあ、君からやってみようか?」
私が指名されてドキドキです。私より背が低いけど、料理が上手な男性って、そんなハンデ一気に覆すわ!
お祭り前にこんな出会いが…。
ダメ、集中よ。頑張るわ。
私の傍で私の不慣れ手つきをじっと観察し、
「ごめん、君大きいから」
と立ち位置をかえ、
「え?背は関係ないですよね?」
「違う、君の大きな胸が邪魔で手元が見えない。」
その時、私は珍しく身長以外を誉められ嬉しかったのですが…。
「…ヤリティエを感じるです。」
ポケットの中のアイちゃんが私に知らせました。