巨人ゴリアトを倒し、一躍人気者となったダビデ少年。
その功績が認められ、サウル王家の武将になった。
容姿端麗、文武両道、青年に近づくにつれ、ますますその美しさと賢さに磨きがかかるダビデ。
子供も娘も、お年寄りからもダビデは愛されていた。
面白くないのはサウル王でした。
「どいつもこいつもダビデ!ダビデ!
あのサムエルさえもダビデを王と認めたらしいじゃないか。」
疑心暗鬼にかられるサウル王。
「ダビデは私の王位を狙っているのか?
ユダヤの王は私一人だ。
王位は絶対に渡さない!」
いつしかダビデに殺意を持つようになったサウル王。
その異常な様子にいち早く気付いたのはサウル王の長男ヨナタンだった。
ヨナタンとダビデは無二の親友だった。
ある日、宮殿の自室で竪琴を奏でるダビデを訪ねたヨナタン王子。
喜んで迎えるダビデ。
「ヨナタン、君も明日の勉強会に来ないか?」
「残念だが断るよ。」
「なんだよ、ヨナタン。
最近付き合い悪いぞ♪」
ヨナタン王子は意を決してダビデに想いを伝えた。
それはヤハウェや十戒を学び合うことより遥かに大事でした。
「ダビデ!
君は早く宮殿から去るんだ!
父君はお前の殺害を企ている。」
驚愕するダビデ。
ヨナタン王子は続けて語る。
「僕は今夜、父王を説得する。
でも、失敗に終わった場合、
明日の朝、僕は弓を引く。
それが『逃げろ』の合図だ。」
翌朝
「皆の者おはよう。
ミカル、朝の調子はどうだい?」
「昨夜はお父様と一晩中話してたのに、お早いですわね、お兄様。」
家臣や妹ミカルに何気なく振舞うヨナタン王子。
しかし…。
「弓を射たい。
侍従よ、飛んだ矢を回収してくれ。」
そこには普段の武将ではなく侍従の衣装に身を変えたダビデがヨナタン王子の一語一句を聞いていた。
(ダビデよ、君はこのままでは殺される。
説得は失敗に終わった。
逃げろ!ダビデ!)
ヨナタン王子が放った矢の方向に走るダビデ。
しかし、ダビデは回収の為に戻ってくることはなかった。
ヨナタン王子がダビデにしてあげられる最後の友情の一矢だった。
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はい、サウル王の嫉妬を買い、命を狙われてしまったダビデ。
ヨナタン王子によって逃がされたダビデは…。

ダビデの竪琴に聞き入るサウル王の絵です。