小さい時からよく転ぶ妹でした。
運動会も演劇も、大事な時ほどよく転ぶ妹でした。
決して運動が苦手な妹ではなかったはずなのに、大事な時ほど妹はコケました。
それは悪企みや逆恨みした時も…。
姉である私が「今は転んでほしい」と願っています。
その為の細工もしています。
でも…私達は忘れていました。
この場に真田先輩という本当のヒーローが居たことを…。
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深い意味はありませんでした。
そもそも計画した記憶がありません。
「笑い者になればいい」
とか
「小さな、ほんの小さな怪我をして困ればいい」
程度の動機でした。
朝礼台の上で演説に夢中になる柳生先輩が、本当に選ばれた人間なら、私が突き飛ばしても、羽が生えて翔べるとその時は信じていたんです!
一番大切な人に選ばれなかった私が、神様に選ばれた人間を試して何が悪いんでしょう?
小走りで朝礼台の階段を一気に昇るつもりでした。
でも…。
予想外でした。
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「貧血かい?さやかちゃん。
暑いもんな、時間ズラそうか?」
走りかけた私は不意に真田先輩に手首を握られました。
言葉は優しくても、何かを見抜いたその瞳は笑っていませんでした。
怖くなり、焦った私は真田先輩の手を振り払い、静かに間合いを詰めるつもりがバタバタと演説してる柳生先輩目指して駆け出してしまいました。
「やっぱり!
柳生ちゃんの演説聞いて自信無くしても、邪魔は駄目だ!」
「真田先輩、放して下さい!」
朝礼台の階段の、最後の一段で再び真田先輩捕まえられた!
と思った時、足元が私の意に反する。
「え?何で?」
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(わざと朝早く出てさやかの靴を履いて登校しました。私の方が0.5センチサイズ大きいから、さやかは知らずに緩い足元で転ぶはず)
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急に靴が脱げて私は転ぶ。
「うわぁ!さやかちゃん、急にしゃがむなよ!」
先に転んだ私の身体に、追いかけてきた真田先輩が躓き、私を捕まえる為に伸ばした先輩の手は…。
「キャー!」
「バタン!」
…演説中の柳生先輩のスカートを掴んで倒れこんだから…。
「いやぁー!
真田先輩、突然何を!」
全校生徒に下着姿を見られた柳生先輩!
『真田会長が候補者を脱がした~!?』
「違う!!
俺は君をさやかちゃんから…。」
「真田先輩…優矢くんの許可も無しに…こうゆうことは困ります…。」
「恵里菜!怒り方おかしいし、俺は許可しないし!」