「さやか~!私、美空ちゃんと約束あるから先に行くね~!」
…昨夜は泣き疲れていつの間にか寝てた。
まどかが先に登校してくれて良かった…。
こんな私、見られたくないから…。
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「どうかな?躍動感あるようにアップの髪型も考えたんだけど、オーソドックスなポニーテールの方が男女ともに受けがいいかなと。
それに恵里菜のサラサラのロングヘアをアピールしたいし、こんな感じかな?」
今日はお互いに勝負の日。
柳生先輩は宇都宮先輩に渾身のヘアメイクをしてもらい、気合い十分なようです。
「ありがとう真樹ちゃん!
私、頑張るよ!」
「ううん、私はこんなことしか出来ないから…。」
結い上げられた柳生先輩の艶やかな髪には宇都宮先輩と軽音部の想いが込められてるようです。
「本当に柳生先輩って、天使みたいですね♪空も翔べそう!」
「ありがとうさやかちゃん。
じゃあ、私は先に行くね。」
昼休みが終わり、五時間目が始まると同時に全校生徒が校庭に整列する。
候補者と現生徒員は教師達と同じく、朝礼台の近くに並ぶ。
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「まどか、ホンマに大丈夫なんやろな?」
「大丈夫よ。今までの傾向から言ってさやかはきっと柳生先輩をこの時、この場所で…。
でも私達がそんなことさせない。」
「真田先輩と三好先生に無理言って、『手伝ったからウチらも朝礼台の近くで演説聞きたい』ってお願いしたけど…。
さやかが早まった行動したら全力で阻止せな…。」
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「現生徒会長の真田です。
俺の役目もあと三日。
後継者を順当に導くのが俺の会長としての最後の仕事と思っている!
二人の候補者のうちどちらが相応しいか?曇りなき瞳で皆に見極めてほしい!
では、届け出順に二年生の柳生恵里菜さんからです。」
教師の指示など無視した真田先輩の司会。
本当は私も彼のように振る舞いたいよ…。
「柳生恵里菜です。
私は『護るべき者』の為にだけ闘います!
それは『軽音部』そのものではありません。
私が今すぐ護るべき物は『軽音部の権利』です!
その為には生活指導部だろうが、校長のリコール請求だってして見せます。『真の自立』、その為の『自律』、つまり無意識にオートマチックに循環する学校環境を…。」
誰もが聞き入る先輩の声…。
ホントに天使みたい。
でも…天使なら翔べますよね?
朝礼台の上の先輩を、後ろから私が押しても…。
「さやかの様子が変や!」