「中学の文化祭の時に…。」
私は柳生先輩ほどの覚悟はないでしょう。
でも心意を伝えてくれた先輩に真意で応えるのが誠実さってものだと思う。
柳生先輩は笑顔で聞いてくれた。
「毎回キャッチフレーズを生徒から募集するんです。
アトラクティブ(魅力的)とかイノセントワールドとか。
で、私の『一人はみんなの為に、みんなは一人の為に』って言葉が採用されたんです。
その文化祭で私も演出を担当してたから、舞台でもその気持ちで頑張ろうと思ってたんです。
でも…。」
「何かあったの?やっぱり学校側から?」
「はい、採用されたのは前半部分のみ。『一人はみんなの為に』だけが学校側に『献身的に社会に貢献する学校』を地域にアピールすることに利用されたんです。
『みんなは一人の為に』だって同じくらい大事なのに!」
「日本人は世界中どの民族よりも、『誰かの為に』の意識が強いって父も母も言ってたわ。
さやかちゃんの気持ちもわかる。
柿崎くんの勇気で学園が護られたことを全体で受け止めてほしいんでしょう?
一極集中なその想いだけは…。」
「違います!私に私的な感情はありませんから!
も、もう帰りましょうよ!
三好先生は職員会議長引いてるから、明日朝に提出しません?」
「そうね、普通に部活が終わるくらいの時間になったし、一緒に帰ろう。」
サッカー部は自由練習です。敗戦のショックで三年生男子の引退式がまだ行われず、同じく高坂先輩、中島主将も恋人の落ち込みが連鎖し、男女ともに暫く自由参加型の練習になってます。
勿論、三好先生が生徒会顧問として多忙なのもありますが…。
帰り道にグランドも見るとまだ練習してる二人の男子!
「優矢くん!私は終わったよ~!待っててくれたんだよね、ありがと~!」
帰り道にグランドの夜間照明に気づくと思って、ギリギリまで練習してた相良先輩。
でもそのパートナーが…。
「柿崎先輩!まだ練習しちゃ駄目!
相良先輩も何で止めないんですか!」
驚きました。右手に包帯したまま、ボールを蹴ってるから。
「柳生ちゃん、お疲れ~。おっ、さやかちゃんも一緒か?
待っててくれ。
着替えてくるから。」
「勝手に無茶な練習する人を待ちたくありません!」
…通学路を2vs2で帰ることに…。
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男子ロッカールーム
「柿崎、本当にいいんだな?俺は構わないが…。」
「あぁ、俺には今しかない。
ありがとう相良。」
続く