自慢の快速で見事に真田先輩のボールに追い付き、ダイレクトのセンタリングを上げることに成功した優矢くん。
でも…。
「長すぎだ、合わせる奴がいない!」
追い付くのに必死でコントロールを失ったボールは相手ゴールから遠ざかるだけと思われたけど…。
そこに居たのは片倉先輩!
「赤松くんは、僕と相良くんを信じてくれたから留学生をディフェンスすることを選んだ…。
ありがとう…。」
決定的な場面での片倉先輩の乾坤一擲のシュートが尼子さんのディフェンスを打ち破るかと思ったが…。
相手キーパーのタイミングを外す弛いパス!
この場面でも片倉先輩に焦りは無かった。
「フォワードはまだあと一人居る!」
わざと遅れて走りこんだ武田主将。
片倉先輩のパスに合わせた絶妙のシュートのはず…。
「武田、片倉、同時代にお前達と対戦出来たことを誇りに思う。
この後のチームに圧勝することが我々の北条学園に対する敬意だ」
それでも徳川実業の尼子さんは動揺しなかった。
態勢を崩されても、右足にかろうじてボールを当てた!
跳ね返ったボールは真上にバーを叩き、ラインを割ったかのように見えたがゴールは認められなかった。
今度は尼子さんからの徳川実業のカウンター!
北条学園にはもう戦う力は残って無かった。
安国寺くんふわりと浮かしたループシュート!
飛び出した真田先輩の頭を越えて無人のゴールに…。
必死でスライディングした赤松くんの健闘虚しく、彼は自らボールを押し込んでしまった…。
「ピッ、ピッピッー!」
試合終了0-1
北条学園の決勝進出と、全国大会出場の夢は破れました。
「うわぁ~、あと少しで追い付いたのに…。」
「泣くな赤松、お前はまだ一年だ。」
「榎田すまない、俺はお前を決勝の舞台に…。」
「謝るな真田。同時代に尼子みたいな怪物が居たら仕方ない。
俺でもお前でも結果は同じさ。
長年チームを支えた武田のシュートをあそこで神憑り的に止めたんだ。
なんか逆に清々しぜ。」
「すまん、相良、片倉、俺は、俺は…。
うわぁ~。」
応援してる控え選手も涙を流し、女子部員は抱き合いながら号泣しています。
そういう私だって…優矢くんの女神になれなかったのが悔しくて…。
「な、泣くなみんな…去年から比べたら大躍進だ!今日は全員が最高の出来だったぞ…。」
高坂先輩でさえ、泣き続けていました。
こうして三年生男子の夏は終わりました。