後半残り3分。
試合は0-0のまま膠着し、延長やPK戦を想定してたでしょうが、こっちのファウルで、徳川実業の直接フリーキックです。
最大のピンチは最大のチャンスのはず。ここを守り抜いて何とか攻撃に繋げてほしいのですが…。
榎田先輩がベンチに駆け寄り、真田先輩と話します。
「榎田、こんな作戦をお前が受け入れてくれるとは思えんが…。」
「なるほど。奇策中の奇策だな。
ここまでやって点を取れなかったんだからやってみる価値はある。」
「ホントにいいのか榎田?
俺は別に自分が出たいからじゃなくて…。」
「控えを見ろ。二年の脇坂に鍋島あたりじゃ、この局面を打開できない。
攻撃的なカードを切るのは間違っていないさ。
そしてお前は攻撃面においては俺より優れている。
点を取る為のキーパー交代…間違ってないさ…。
アレをやれるのはお前と相良だけだ。
絶対に勝って、俺を決勝戦に出せよ!」
「わかってる、ありがとう榎田。」
「公式戦初出場おめでとう、名監督の第二キーパー(笑)。
じゃあ、俺はただ勝利を祈ってるよ。」
両チーム驚きの采配でした。
この緊迫した場面でのキーパー交代。
最後の交代枠を使って出場した真田先輩。
みんな榎田先輩が負傷したと思ってましたが…。
一緒に練習してきた優矢くんはわかってました。
「いいか、ここで点が入らなかったら負けと思え!」
これからディフェンスをする側のセリフとは思えない真田先輩の叱咤激励。
「点を取られること」より、「防いで当然。その後どう点を取るか?」しか考えていない真田先輩の鼓舞はチームに勢いを与えました。正しく攻める守備でした。
徳川実業のキッカーは勿論、安国寺くん。
直接狙ってくると思ったけど、イバチェビッチさんの頭に合わせてきた!
真田先輩は逆を突かれたと思ったけど…。
同じく長身フォワードの赤松くんが守備でも貢献して高さで競り合う!
ヘディング合戦は引き分けで、真上に上がったボールを真田先輩が手を伸ばしキャッチした!
やった!最高の形で反撃に移れる!
「走れ相良!」
「もう、走ってますよ!」
全てはこの1プレーにしてラストプレーの為のキーパー交代。
ボールをキャッチした真田先輩からの特大パントキック!
それに合わせて走る優矢くん
「トリプルカウンターアタック」
真田先輩からのボールが着地する前にダイレクトでセンタリングを上げる優矢くん。
「いっけ~!」