昨日までと同じ雰囲気で教室に居れないことはわかっていた。
元々、部活以上にクラスに居場所が無いのはわかっていた。
でも…。
「伊達さん!昨日現場で犯人見たんだってー?
どうだったー?」
「ええと、あの…ごめんなさい、よくわからないです。」
テスト前にしか私に話かけないクセにこんな時だけ興味本意で…。
「夕子の話じゃ、見るからにキモオタが2組の赤松くんにフルボッコされたんだってー!?
見たかったな~。」
…そんな…赤松くんのせいで柿崎先輩は右腕を切られたのに…。
「凄~い!予選得点王の赤松くんってやっぱり見た目だけじゃなくて、中身も素敵ー!」
…みんな暴力を肯定するのですか…?
赤松くんは英雄なんですか…?
「ちょっと、あんたらええかげんにしいや~!
今回のことでケガ人も出てんねや!
不謹慎やろ!」
「大谷さん、別に貴女と同じサッカー部員を誉めてるんだし…?」
美空ちゃん、ありがとう。
貴女がいなければ、私は今回の件で完全に教室で孤立していた…。
「あんだよ、トロい奴がケガするの当然だろ?
どうせ、赤松が殴って痛めつけてなきゃ、女教師なんかが犯人逮捕出来るわけないだろ?」
女子同士の会話に便乗してきた一人の男子。
柿崎先輩の勇気が「やられ損」と捉えられたことに、怒りより哀しくて、また泣きそうになった時、
「あんた、もう一辺言うてみぃ!」
男子に遠慮なく殴りかかる美空ちゃん。
泣いてる場合じゃない!
大切な美空ちゃんだけでも私は守らなきゃ。
「やめて、美空ちゃん!怒りに任せたら犯人や赤松くんと同じよ!」
何とか美空ちゃんの右ストレートが男子の顔面にヒットする前に止められた私。
柿崎先輩ほどカッコよくないけど、私にだって…。
「こら、何してる!座れ。」
教室に担任が入ってきてやっとその場は収まりがついた。
でも…。
「北畠、お前軽音部だったな。
昼休みに生徒指導室に行け!」
****
「北畠さん、どやった?
やっぱり昨日の件との関係か?」
私からは聞きにくいことを美空ちゃんが聞いてくれた。
「ひどいよ…。
宇都宮先輩の学園外のライヴ活動と、軽音部は関係ないのに。
確かに大半は楽器も触れないにわかファンばかりだけど、私は、吹奏楽部から純粋にドラム叩きたくなって入部しただけなのに解散なんて…。」
「宇都宮先輩の学生らしくない行動が原因だから当然だわ」
私は言ってしまった…。