職員室
「校長への報告は終わったかい?真理亜ちゃん。」
「ええ、さすがに今回はたっぷり絞られましたわ。
私の顧問や担任の解任まで視野に入れてるそうですわ。」
「しかし、真理亜ちゃん自身が犯人逮捕したから強くは言えないと。」
「そのとおりです。龍造寺先生。私が進退を決めるのは生徒の支持を失った時と思っています。」
「ホッホッ、わしも真理亜ちゃんくらい若い時には同じことを言ってたわい。」
「本当に申し訳ございません。
龍造寺先生にはいつもいつも…。」
「いや、そもそも北条中学からの協力依頼をわしが真理亜ちゃんに丸投げしたからじゃ。
定年前の広域指導員に協力してくれるのは真理亜ちゃんだけじゃよ。」
「龍造寺先生には秋彦と漣のことで返しきれない恩があります。
ただ今回は…。」
「柿崎くんには悪いことをしたのう。
大事に至らず本当に良かった。
で、親御さんは何て?」
「はい、彼を送り届けた夜、私の謝罪を受け入れて下さりました。
『もしも他の誰か、特に女の子が傷つけられていたら、亮太の心の傷はもっと深かったと思います。
そういう子なんです。
先生自身が犯人を捕まえてくれたことで仇討ちは終わってます』と言ってくださりました。
付き添ってくれた伊達さんも『悪いのは犯人ですから』と繰り返し、柿崎くんのお母さんに訴えてたました。」
「悪いのは…か…。青春じゃのう…。
若者の特権じゃ。
ホッホッ。
では、この後の『正義vs正義』も真理亜ちゃんに任せるとするかの。」
「そんな…龍造寺先生…。」
「真理亜ちゃん、『生徒の声に耳を傾けよ』じゃよ。
わしの言葉よりもな。」
「龍造寺先生、それで中学の方は?」
「おぉ、そうじゃった。
北条中学の不審者騒ぎは、収まったわい。
今回の犯人とは別人じゃ。」
「では犯人はあくまで宇都宮さん狙いで…?」
「近隣を下調べしている犯人の噂に、便乗した女子中学生が成り済まして、同級生を狙ったそうじゃ。
なんのことはない、ことの始まりは友人同士の仲間外れじゃ。」
「しかし、成果はありましたわ。
ウチの子達が不審者以外にも、地域の治安維持に貢献しましたわ。」
「まぁ、校長や教育委員会は『余計な仕事を増やして』と思っとるじゃろうがな」
「龍造寺先生、宇都宮さんと軽音部の件は…。」
「それについては、わしは真理亜ちゃんの手腕に任せとるわい。」
はぁ、大人ってめんどくさいわ、徹