帰り道、私と柿崎先輩は三好先生の車で送ってもらった。
「先生、赤松に悪気はないんだ!
今は大事な時期なんです!
小菅がドイツに行っても、ウチが勝ち進めてるのは赤松のおかげなんだ!
全国常連の徳川実業の推薦を蹴ってまでウチに来てくれた逸材なんだ…。
俺なんかただの第三キーパーだがあいつは違う!
だから…。」
勝手な暴行を働いた赤松くんに、無期限部活停止を言い渡した三好先生。
それが原因で負傷したにも関わらず、大会への継続参加を嘆願する柿崎先輩。
運命の準決勝は来週です。
その次の週は生徒会選挙だし…。
ただでさえ忙しい時期にこんな事が起きるなんて…。
三好先生の処分は妥当だし、柿崎先輩の気持ちもわかる。
本当は赤松くんの気持ちもわかってあげたいけど…。
「柿崎先輩、お願いです!『俺なんか』なんて言わないで下さい。
先輩が自分で自分のことをそんな風に言われたら、私は…どこに居場所を…グスッ、ウン、ご、ごめんなさい…。」
悲しさと悔しさと、これから多分起きるであろう訳のわからない『何か』を想像したら、怖さと不安で泣き出してしまった。
その『何か』はきっと『決まり』と言う壁。
その『何か』はきっと『大人』と言う人形。
そして『組織』と言う名の監獄。
本当に私はどこまでお荷物なんだろう。
私は柿崎先輩に何もしてあげられない。
「お、おい伊達さんが何で泣くんだよ?気持ち悪い傷口思い出したか?
すみません、先生、どこか停めれますか?」
(…全くこの子の将来は、徹や武田くんよりも末恐ろしいかもね…。
変に知恵が無いだけ真田くんより厄介かも…。)
「二つ先の角曲がったら東●ハンズがまだ開いてるわ。
取りあえずそこに停めるわ。」
エレベーター横のベンチに先生と座り込み、顔を隠しながら自販機のジュースを飲み落ち着く。
柿崎先輩は「ちょと…。」とだけ言って上の階に行った。
確かにお手洗いは二階だけど…。
戻ってきた先輩は
「クマ、ネコ、ネズミどれが好きだ?」
とだけ私に尋ねた。
反射的に「クマさん」と言った私の言葉を聞いてまた上に行く先輩。
そしてまた戻ってきたら…。
「これやる!
だからもう泣くな。」
包装もなく店のテープが貼ってあるそれは…。
リ●ックマの防犯ブザー??
「…間に合わないなんて…嫌だから…持ってろよ…。」
(ふ~ん、私が見てること二人とも忘れてるわね♪
でも『ランドセル用』それ…)