「いやぁ、柿崎先輩!先輩がぁ~!!」
「あかん、刃物持っとる相手に近づいたら危ない!」
その時、大谷さんとまどかは必死で私を押さえてたそうです。
そして…。
駆けつけた三好先生。
凶行に及んだ男に、時を逸した投げ技を見舞う。
一瞬で捩じ伏せ、凶器を取り上げました。
「違う、先生。
俺は悪い奴に罰を与えただけだ!
俺は何も間違って…。
あいつが悪いんだ!」
犯人の身柄を南部先輩に預けた三好先生は、赤松くんの下に歩み寄り…。
「パシーン」
容赦ない三好先生の平手打ち。
「…赤松くん、暫く部員達の前に来ないで…。」
「三好先生、後は自分が。
早く負傷者を病院へ。」
後から来た南部先輩がジャージの上着を器用に結んで犯人を拘束します。
「甲賀流の捕縛術から貴様はもう逃げられん!
警察が来るまで大人しくしてろ!
本当は縄があればいいんだが…。」
「あるよ、使えよ南部ちゃん。」
「あ、ありがとうございます、武田主将。
よくこんな物持ち合わせてましたね?」
「新体操部に忍びこんだ時の戦利品だよ。」
「…そのことは別件で後ほど…。」
「パッパー!」
三好先生の軽のクラクションが鳴り、他の男子部員が道を開けるように誘導する。
「救急車を待ってられないわ。
飛ばすから柿崎くんを乗せて。
徹、片倉くん、学校側とのやり取りは真田くんを頼りなさい!
任せたわ。
さやかさん、貴女も早く乗って!」
「わ、私もですか?」
急に三好先生に名前を呼ばれ動揺する私。
「貴女以外に誰が彼を助けられるって言うの?
車の中で止血してもらう子が一人要るの!
乗りなさい。」
正直、車の中の記憶はありません。
車内にあった救急箱を渡され、運転しながら応急処置を指示する三好先生と、ただただ右腕を押さえて痛がる柿崎先輩をなだめるのに必死でした。
そして病院に着いたころには…。
「伊達ちゃん、気がついた?」
病院のベットで目を覚ましたのは私の方でした。
「あれ…?
私?どうしてベットに?」
「医者が俺の患部を看る為に、袖を切ったら、生の流血した傷口見て気絶したんだよ。」
「ご、ごめんなさい。
私、足手まといで…。
先輩、ケガの状態は?」
「あぁ、長袖のユニフォームが僅かにクッションになったのと、カーボン製の肘当てにナイフが一度滑って動脈を逸れたらしい。
切り傷だから助かったが、刺し傷ならヤバかったそうだ。」