「芹沢、三好先生を呼べ!
みんな、早くここから離れて。
佐竹先輩は付き添って下さい。」
宇都宮先輩に付きまとう熱狂的なファン。
嫌がる先輩の前に助けに来てくれた四人組の男子部員。
それは柿崎先輩のグループでした。
キーパーらしく冷静な判断で他の部員に指示を出す柿崎先輩。
不謹慎にも改めてカッコイイと思った私…。
騒ぎでピークを越えたとはいえ、僅かな下校途中の生徒も足を止めてます。
佐竹先輩はその生徒達を帰らせるように促してました。
そして残った柿崎先輩と赤松くんは…。
「ウチの生徒に何の用ですか?
どうしても話がしたいなら、職員室で他の俺ら全員で立ち会いますよ。」
見るからに気持ち悪いオタクに対しても、一応「話し合い」の立場を取ってる柿崎先輩は立派だと思います。
安全の為にも私達は先輩達を気にせずに帰らなければなりませんでした。
男子が心配で様子を見てしまったことがまさかこんな…。
「赤松、反対側を頼む。
職員室まで連れてくぞ。
途中で片倉先輩に合流してる間に、芹沢が三好先生を連れて来てくれるはずだ。」
それは男子二人で不審者の両脇を固め、「同行」を願い、後は教師達に任せる大人な対応のはずでした。
しかし、
「柿崎先輩、お言葉ですが、先生や先輩の助太刀は要りませんよ!」
「バキッ!」
「キャー!」
赤松くんが殴った!榎田先輩より大きな彼の拳はそれだけで凶器です。
慌てて柿崎先輩先輩が制止しますが…。
「おい、赤松!手ぇ出すな!
暴力が目的じゃないだろ!」
「こんなバカは痛い目見ないとわかんないんスよ。
よくも宇都宮先輩を…。
わかってんだろうなー!」
「レヴィンたんは、宇都宮さんて言うんだな…。」
「貴様ー!」
赤松くんの一方的な、行き過ぎた暴行は収まりません。
私達はその光景に足がすくみました。
やがて宇都宮先輩は泣き出し、小さな声で
「やめてよ…。」
と言ってました。
しかし、それが余計に赤松くんを逆上させ、不審者の方も
「よくもレヴィンたんの前でこんな恥辱を…。もう許せないんだな…。」
ポケットから取り出した小さく銀色に光るモノ。
真っ先に気付いたのは柿崎先輩でした。
「バカ、逃げろ赤松!」
二人の間に飛び込んだ柿崎先輩。
私には最初何が起きたかわかりませんでした。
先輩の右手から流れる紅い液体を目にするまでは。
「いやぁー先輩!」
私は半狂乱に叫んでたそうです。