その日の夜 伊達邸
「じゃ、私、テスト勉強あるから。部屋に行くね。
お父さん、お母さんおやすみなさい。」
「おやすみなさい、さやか。
まどかもドラマばかり観てないで勉強しなさい!」
「母さん、いいじゃないか、まどかは退屈な入院生活を終えて間もないんだから夜のテレビが恋しいんだよ。」
「もぅ、パパもママもうるさい!
さやかが特別頭いいだけで、私も中間は十分な成績残してますから安心して!
…でも、さやかがこんな早くにテスト勉強するなんて珍しいわね…。」
「ウソ?!凄い!
え~絶対に無理だよ!
早い!
おっきい!」
さやかの部屋から漏れる歓声!
何に熱中してるかは知らないけど、テスト勉強じゃないのは確かね。
と、なると…いや我が妹に限ってまさか…。
「ガチャ!」
「な~んだ、サッカーのDVDか、残念。」
「まどか、いつも勝手に部屋に入らないで!って言ってるでしょ!
それに残念て何よ?
まどかが期待してるのを貸してくれる知り合いは居ませんから!」
「へー、ピーター・シュマイケルじゃない!
いー趣味してるね~。」
「勝手にパッケージ触らないで!
柿崎先輩が貸してくれたんだから!」
「興奮の理由はそれか、なるほど、なるほど。」
「先輩達みたいな不気味な作り笑いやめて。
双子のあんたに隠し事しようと思わないわ。
どうせご想像の通りです!」
「そんなツンツンしないの、可愛い妹よ!
私ね、安心したんだ。」
「まどか?」
「病気で入退院を繰り返す私に気使って、さやかが無理にサッカー始めたとばかり心配してたんだ。
そして私が後から入部したら余計にさやかは気を使うんじゃないかって。
でも、さやかがキーパーなら…。」
「うん、ミッドフィルダーのまどかと、私は違う。
キーパーはグランドにただ一人。
私はまどかを意識せずにサッカーが上手くなれるの。
この喜びを与えてくれた高坂先輩や真田先輩、榎田先輩にはホントに感謝してる。
そして毎日、付きっきりで運動音痴な私の面倒見てくれる柿崎先輩には…。
社交的なまどかにはわからないだろうけど…。」
「わかるわよ。
同じ道でも、さやかが違う選択をした結果よ。
いいなぁ~、私にも運命の出会いないかな~。」
「まどかなら大丈夫よ、可愛いから。」
「同じ顔でいわれても嬉しくな~い。」
「テストが終われば、なんでしょ?まどか。」
「うん、ドクターから復帰の許可が出たの。」