いつもと変わらない日常。
違うのは、たまに来店する若奥さんが、小学校低学年くらいのお兄ちゃんだけでなく、下の男の子も連れて珍しく三人で買い物に来てたこと。
お母さんとお兄ちゃんは私のレジに来た。
「いらっしゃいませ。」
私は一日に何回言うかと思うほどの当たり前の挨拶と、当たり前接客でカゴの商品をスキャンする。
お兄ちゃんが大きな声を出す。
「れんや!(漢字不明)早くお菓子決めろ!
帰るぞ!」
いつの時代も上の子はお兄ちゃんぶりたいものだ。
お母さんの前では大人しいのにね(笑)。
慌てて駆け寄る下の子が、私にお菓子を差し出す。
私はバーコードをスキャンし、テープを貼り手渡しする。
小さなお客様の接客の基本だ。
そして同時に声を掛ける。
「弟くんはれんや君て言うんだ!カッコイイ名前やな!」
本当にそう思う。最近のキラキラネームには閉口するが、私も小学生の時はあり得ないくらい難しい漢字の名前に憧れたものだ。
弟くんがれんや君ならお兄ちゃんは確か…と、過去の記憶を振り返っていると、そのれんや君が元気良く返事してくれた。
「ゆうやがお腹から出て来た後に、僕を作ったから、僕は弟なんだよ!」
……。
他のお客様も、スタッフも勿論その場に居ました。
私は何とか、
「凄くわかりやすい説明ありがとう♪」
と言って、顔を真っ赤にして下を向きながら相手のお母さんの顔を一切見ずにお釣りを渡すことに成功しました。
おそらくそのお母さんも私と同じ反応をしていたと思います。
素直な子供って凄い……。
(終わり)