現在真樹ちゃんの2-3。
この五本目を外せば私の結果に関わらず真樹ちゃんの負けです。
試合なら勝ったチームはもう蹴らないですが、これはキーパーの伊達ちゃんの練習ですので、最後まで蹴らしてもらうです。
4本目を外した真樹ちゃんは、さっきと同じく、ゴールラインに垂直に助走を取ったです。
「宇都宮、ラスト五本目、右上、行きま~す!」
真樹ちゃん…。それは伊達ちゃんを甘く見すぎです。
工夫なく、同じシュートを撃っても伊達ちゃんに防がれるです。
まさか…真樹ちゃんは西九条くんの姿を見て諦めたのですか?
そんなの嫌です。
ちゃんと真樹ちゃんも決めた上で、最後に私が決めて勝ちたいです。
私の真似をしたくない気持ちはわかるですが、私を参考にして斜めからの助走をすべきです。
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もう、聞こえちゃったんだから!
スケッチブックに愛ちゃんをいっぱい描いてたなんて、二人ともどんだけラブラブなのよ!
い~わよ、い~わよ、二人とも拉致してでも私のライヴに連れてって、MCで晒し者にしてやる(笑)。
でも、歌のプレゼントの前に私からのサプライズシュートよ!
「お幸せに!」
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工夫の無い真っ直ぐの助走です。
しかし、工夫がなかったのは助走だけです。
『左足!?』
真樹ちゃんが初めて見せる左足からのシュート。右足で左上に狙ってのと同様に、鏡に写したようなシュートです。
「あぁ、早い…。」
「惜しかったな、伊達ちゃん。
今のは仕方ないよ。」
「もう少しだったのに悔しいです。柿崎先輩…。」
「一本目の時は『悔しい』とさえ思わなかっただろ?
さぁ、切り替えて最後に臨もうか。」
真樹ちゃんがまさか左足を…。
自分が恥ずかしいです。
一瞬でも真樹ちゃんを疑って申し訳ないです。
「里見、五本目、右上、行くです!」
三本目の反省を活かすです。
私がにわかに左足のシュートを撃って成功するわけないです。
私の斜めからのシュートはまだ防がれてないです。
真樹ちゃんは真樹ちゃん。
私は私です!
「入れですー!」
コースも勢いも十分の渾身の右足!最後は二人とも決めて私の勝利…?
「止・め・る!」
「バシッ!!」
それはゴール右隅に入るボールを、力強く弾き出す伊達ちゃんのテッペキの右手だったです!
そして…。
「よっしゃあ~!!」
伊達ちゃんが猛々しく吠えたです!!
宇都宮○×○×○
里見 ○○×○×
結果 引き分け