その日の夜
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泣くだけ泣いたらすっきりしたかな?
でも…、西九条くんの好きな娘が愛ちゃんで良かったかな?
二人の仲が上手く行けば、私は両方と友達になれるわけで…。
これって西九条くんの「友情」にすがりつくみたいで見苦しいかな?
でも、三好先生は「愛情より大切な友情がある」って言ってたもん!
気持ち切り替えて二人を応援しなきゃ…。
失恋じゃないもん!
私の失恋ってのは高坂先輩と片倉先輩が付き合ったことで…。
あぁ、もう!
このイライラはサッカーで発散するのよ!
高坂先輩の厳しい指導受けて、恵里菜とくだらない話で盛り上がったら何ともないんだから!
あ~、余計なこと考えないで寝よう~っと。
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もう涙も出ないです。
絵のモデルに指名するほど真樹ちゃんのことが好きな西九条くん。
おそらくモデルをしてる内に愛情が芽生えた真樹ちゃん。
そして私は西九条くんにとって「友情を感じていない」と言われ、友達以下の扱いを受けたです…。
悲しいけどこれが現実です。
例え、西九条くんと友達にさえなれなくとも、私には真樹ちゃんの今までの友情に応える務めがあるです。
西九条くんに嫌われていても…真樹ちゃんを応援したいです。
これは失恋にカウントされないです。
失恋とは真田先輩と京子先輩の絆の強さを思い知った時です。
三好先生が言ってたです。
「愛情より大切な友情がある」と。
とにかく、今日は寝て明日サッカー部で全力で走って忘れるです。
恵里菜とアホトークをして、真田先輩の知的で凛々しい眼差しに癒されれば万事OKです。どこかの不健康な絵描きの眼差しとは大違いです!
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翌日 放課後
「里見!宇都宮!」
高坂先輩は二年生キーパーの柿崎くんから指導を受けてる伊達さやかちゃんの下に歩みより、愛ちゃんと真樹ちゃんの名前を呼びました。
「伊達、この一週間よくキーパーの基本練習に耐えたな。
一段階上げる。
里見と宇都宮のPKを止めてみろ。」
「高坂先輩!それはまだ早いですよ!」
コーチ役の柿崎くんが驚いてました。
「安心しろ。二人にはあらかじめコース宣言して蹴らせる。
最初から中島や柳生のシュートを止めろと言うのも酷なものだ…。
里見と宇都宮にもコントロールを鍛える良い練習になりそうだ…。」
高坂先輩は私のシュート力を褒めてくれたのかな?
「ええと、セービングの基本は横でなく斜め前に顔の前で手を三角に…。」
伊達ちゃん…。