美術室
「よし、完成だ…!
宇都宮さん、この二週間本当にありがとう。」
他の美術部員を「おぉ~」と声を上げ、出来上がった西九条くんの作品を観ようとキャンバスに集まる。
「真樹タン…カワイイ!」
「さすが西九条、天才だよ!
美術室の、イヤ、学校の宝だよこの絵は!」
みんなが西九条くんの絵を誉めまくってます。
描いたのは西九条くんだけど、モデルは私だから何だか私まで照れてしまいます。
「これ、本当に私?
こんなに綺麗じゃないよ~。」
「宇都宮さん、それ、一日三回は言ってるな。
俺はモデルの内面に潜む美を表現しただけだ。」
私が絵の中の私に恋しそうなくらい!
西九条くんは生粋の芸術家だわ。
絵と音楽で私とは違うけど、この二週間、彼の作品に対するストイックさに多くを学びました。
「本当にありがとう。
私、少し軽音部と距離置いて、凄く良かったと思う。
ここで椅子に座って、描いてもらってる間、自分の音楽を客観的に見つめることが出来たの…。
ねぇ、ちょっといい…?」
みんなの前は恥ずかしかったので、美術準備室に入ってきてもらい、この日の為に用意してきた物を渡す。
あくまでお礼なんだから!
最後は西九条くんが決めることなんだから…。
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漫画研究部
私は最低です。
真樹ちゃんと西九条くんの仲の良さを目の当たりにして、耐えきれず美術室から逃げ出して二週間。
ずっと…二人の仲が壊れることを願ってたです。
西九条くんの粗野でぶっきらぼうな態度に、真樹ちゃんが我慢仕切れずに逃げ出すことを期待し続けるなんて…親友失格です…。
でも、私は何をここまでイライラしてるですか?
二人の間柄は私には関係ないです。
関係があってはいけないのです。
「里見先輩、お客さんですよ~?」
私にですか?
確か、西九条くんの絵は今日か明日に完成だと真樹ちゃんは楽しそうに言ってたですが、終わったから一緒に帰ろうと誘いに来たのでしょうか?
「久しぶり、里見さん!」
に、西九条くん!
どうしてここに?
「わ、私に何の用ですか?」
「絵のお礼に宇都宮さんのライヴに誘われた。
二枚のチケットをもらったが、俺に友人はいない。
何とか思いついたのが君だ。」
訳がわからないですー!
真樹ちゃんのライヴに、私が西九条くんから誘われるなどと…。
「あぁ、最初に断っておくが、俺は君に友情を感じていない!」
…みんな大嫌いです。続