私は知らず知らずにまどかを追い込んでた。
病気のまどかに笑顔で『頑張れ、頑張れ』しか言わなかった。
勉強もサッカーも出来ない悔しいまどかの気持ちを全く考えず、『頑張れ』を連発すれば私はお見舞いの役目を免除されたと思ってたかもしれない。
…失ってみて初めてわかる大切さ…。
「もう、来ないで!さやかの顔なんて見たくない!
苦しんでる私を見るのがそんなに楽しい?
苦しんでる私を介抱したら、さぞかし『私はなんて慈悲深い妹』って自己満足出来るでしょうね!」
ショックだった…。
自慢じゃないが仲の良い双子だった。
成績も同じくらいのレベルで躊躇なく志望校を同じ北条学園にした。
サッカーが上手いまどかに少しは嫉妬はしてたけど、私には舞台があった。
だから、進学しても普通に演劇部に入るつもりだった。
まどかの真意を知るまでは。
私は自分で十字架を背負った。
保健室で入試を受けるまどかよりも良い点数を取ること。
運動音痴なんて言い訳せずに、まどかがやりたいサッカーを私が死に物狂いでやり続けること。
そしてその想いを最後まで隠し通すのが私のラストステージ…のはずだったのに…。
サッカーって、いやサッカー部の人達って何でこんなに楽しいの!?
まだまだ全然へたくそだけど、まどかが復帰したらすぐ辞めるつもりだったけど…今は一緒にサッカーがしたいなって…。
「小菅先輩!
ウチもドイツに連れてって!
料理も洗濯も出来へんけど…。」
明るくムードメーカーな大谷さん。
貴女が居なかったら、私はもうとっくに辞めてたわ…。
「おぉ~美空ちゃん攻めてきた~!
さすが大物ルーキー!
それでこそ女子サッカー部よ!」
島先輩、そんなの言えない私は女子サッカー部として駄目ですか?
「あ、あの大谷さん…僕は…。」
「ウチにドイツ人の彼氏出来るまで、ルームシェアして下さい!」
「小菅の未来のドイツ人彼女に追い出されるぞ!大谷ちゃん!
ちょうどいい、小菅。
『男女交際に賭け試合。
学年バリアフリーは北条の華』だ。
彼氏なしガールズの中で誰が一番好みだ?」
武田主将無茶ぶりですよ!
いや、男子部の方達って毎日こんなような…。
でも誰を指名するか気になる…。
一応、大谷さんも私も一人だし…。
これでまどかって言われたらショックだわ。
あとは…三年生の山名先輩と二年生の宇都宮、里見、結城の三先輩ね。
「別に彼氏持ちでもいいよ。」
片倉先輩!