4月27日
高坂先輩の過激なパフォーマンスで男女サッカー部は一時的に大混乱になりましたが、あれから10日です。
根性の無いミーハー部員は大分淘汰されたです。
その惨状は後に伝えるとして、今日は漫研の方に参加する日です。
「逃げ」の気持ちは持ちたくないですが、下心丸出しのアホ部員を相手にするより癒されるのは確かです。
「里見先輩、私達の作品の下書き出来ました。
読んで下さい!」
漫画研究会には一年生が男女二名ずつ入部したです。
三年生の先輩に聞くと例年通りくらいだそうです。
私は可愛い?女子の後輩が描いた漫画に目を通し、
「物語も、キャラ設定も悪くないです。
絵も上手い方だと思うです。
ただ建物や背景が…。
確かに今はパソコンやフリー素材があるですが、基礎のスケッチを疎かにしてはいけないです。」
「はぁ~い、里見先輩は厳しいなあ。」
「丁度いいです。
今日の部活は、天気がいいから屋外で風景のスケッチをするです。」
顧問と部長の了解を取り、一年生女子を連れて、私がお気に入りの写生ポイントに行くと…。
「あれ?7組の里見さん?
サッカーはいいの?」
私のお気に入りポイントに偶然居合わせた華奢な男子。
蒼白く、虚ろな瞳が一部女子から敬遠されてるですが、西九条純くんの絵に打ち込む真剣さは嫌いじゃないです。
「今日は漫研の方に出席です。
西九条くんはコンクールに出す作品ですか?」
美術選択の授業でお互いを誉めあったことがあるですが、西九条くんの絵の上手さは私なんかよりケタ違いです。
彼が一人で美術部を支えているのが現実です。
「あぁ、賞取りの絵は描きたくないんだが、部の予算の為にな…。」
一年生が描きかけの彼のスケッチを見て歓声を上げる。
「凄~い上手!」
「いや、ここは俺が見つけた最高の写生ポイントだからな。」
その言葉を聞いて、ニヤニヤと口に手を当て、耳打ちする一年生…。
「なるほど~、それは最高のポイントですね、先輩方~。」
「なっ、変な誤解するなです!
西九条くんとは偶然…。」
「俺は君となら誤解されても構わないぜ?」
「あ、あのそれは…。」
か、顔が熱いです!
何ですか?この感覚は…。
「良かったら、俺がスケッチ見てやろうか?
条件次第で。」
「な、何ですか?私に出来ることなら…。」
「宇都宮真樹ちゃんに俺のモデルになってほしいんだ。」
…私も大概のアホです。