第18話 第一部最終回
僕の課題は「婚約破棄」である。
これにより二人の関係が美しく、有意義になることであり、自然が授けた彼女の優艶さと愛らしさを楽しむことである。
彼女が「愛することとは何か」を学び知った時、婚約は不完全な形式として壊れ、彼女は永遠に僕の物になるのだ。
だが、大多数の人間は退屈な結婚に善良な期待を永遠にかけるものだ。
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はい、まずはここまでで第一部完とさせていただきます。
丁度、本も半分まで来た所です。
そうです、セーレン・キルケゴール最大の謎は、最愛のレギーネと何故、婚約破棄したか?なのです。
愛する人と「結婚」は望まず、精神的な繋がりを優先したからか?
長男以外の兄姉をことごとく若い内に失ったセーレン青年は、自分も長く生きることが出来ないと信じ込んでいたのかもしれません。
一説には、キルケゴールは肉体に性的欠陥があった、ってのもあります。
また自身の日記には脳炎が既に進行してたとも書いてます。(学者はフィクションだと言いますが、私はこれを信じています。)
また、熱心なキリスト教徒の彼ですが、形式ばったデンマーク教会を痛烈に批判しています。
それにより、教会主導の結婚に納得出来なかったかもしれません。
とにかく、諸説ありますが、愛情がMAXの時に一方的に婚約破棄されたレギーネは、立場が逆転し、自分がキルケゴールを追うようになります。
その時の手紙です。
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私は貴方を「私の」ヨハンネスとお呼びします。
私の誘惑者、私の詐欺師、私の敵、私の殺戮者、私の不幸の源、私の喜びの深淵。
かつての喜びの言葉が呪いように響くはずです。
どこへでもお逃げなさい。
それでも私は貴方のもの。
地の涯まで逃げなさい。
それでも私は貴方のもの。
百人の違う女を愛しなさい。
それでも私は貴方のもの。
死んでも私は貴方のもの。
貴方の奴隷となることに喜びの全てを見出だそうと思ったほどに、貴方は徹底的に一人の人間を欺くことを敢えてしたのです。
私は貴方のもの。
貴方の呪いです。
貴方のコーデリアより。
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この手紙をキルケゴールはレギーネに未開封で送り返しましたが、次の手紙にまた同封されてました。
よって、キルケゴールは後年、偽名ですが、著書の中でこの手紙を公表しました。
レギーネとの永遠の愛は現在もに語られています。
詳細は二部で。
(第一部 完結)