著作権とか考えていません(笑)。
むしろ関係者に読んでもらって怒られるくらい有名になってみたいものです。
第二話 「雑貨屋と鏡」
17歳くらいの幸福な年頃には、買い物に行って、手に取る品物の一つ一つが言い知れぬ楽しみを与えてくれるのだ。
そのようなときには、誰だって簡単に何もかも忘れてしまうものだ。
彼女はまだ僕に気付かない。
僕は店の反対側にある鏡を見ている。
彼女は鏡をきにしないが、鏡は忠実に彼女の姿を映し出す。
不幸なる鏡よ!
お前は彼女の姿を映すことは出来ても、彼女そのものを映すことは出来ないではないか!
不幸なる鏡よ!お前の様な人間が何とたくさん居ることか!
他人に提示する為にだけの刹那を持っているだけで、君は自分の為に何を持っているのだろうか?
呼吸をし、命があることを表現しようとしたしただけで、映し出す彼女の面影を失ってしまうこの鏡さながらに。
本質があらわれると、途端にすべてを失ってしまう人々が!
思い出の面影を貴女に認めた時、心の眼で貴女を見る。
口唇で口唇をふさぐ時には僕は貴女を心の眼で見るしかないのだから。
あわれな鏡よ!お前が嫉妬を知らないのはいいことだ。彼女の美しさを映し出せないことにお前は嫉妬しないのだから。
僕は彼女をまだ直接見ていない。
会計を済まそうとする彼女は財布を忘れたようだ。
恐らく自分の住所を告げるだろう。
僕はそれを聞くまい。
彼女とはまた何度か必ず会うであろうから。
僕は奇襲戦法をするだけだ。
むさぼってはならない。
全ての享楽はおもむろに行われなくてはならないから。
僕は視線を直接送るだけでいい。
僕の視線は誰も忘れることは出来ないのだから…。
原作 キルケゴール 脚本 SPA-k

解説
はい、前回より難解かもしれません。
エピソードの流れだけ追うと、雑貨屋で見かけた17歳くらいの少女を店に掛かってある鏡越しに見ているキルケゴールです(笑)。
そして最後に一度だけ直接彼女を見て、印象的な視線を送る。という話です。
「実存主義者」として自己自身の大切さを説き、「反射」で生きる人間になるなと訴えています。
「鏡は鏡という自分を映せない」 by SPA-k