作者注・文中の『』はドイツ語訳表現です。
早い話が逆ギレだ。
高坂先輩一人に全員が突破され、プライドをズタズタにされた一人のドイツの大学生が握手と偽って、強引に高坂に抱きつき、身体を触ってる!
「何やってる離せ!」
同じピッチにいた俺と小菅が飛びかかるが、他の大学生に軽く突き飛ばされた!
ちくしょう、体格差に限界がある!
「いや、やめろ!どこを触ってる!」
『こっちは島国の子供相手にピッチを貸してんだ。
ギャラリーも居る前で赤っ恥かかされたからにゃ、これくらいの駄賃で文句を言うな!』
「放せ!やめ…」
『ボウヤーの野郎、また悪いクセが出やがったな。』
「…助けて…真…。」
「わ、私、三好先生と榎田くんを呼んでくる!」
島先輩が反対側のコートに助けを呼びにいく。
それまで俺が守らないと…。
「…ちょっと…。よくも…私の…優矢くんに何するのー!」
三好先生から山名先輩、そして恵里菜へと受け継がれた柔術を使うつもりだ!
ヤバイそれはシャレにならない。
「駄目だよ、柳生さん。汚れるのは僕だけでいい。それに真田くん、榎田くん、キーパーの手はゴールを守るものだよ。」
それはもう一人ピッチに居た片倉先輩の姿だった。
すぐさま高坂先輩に抱きついてるボウヤーって奴の肩を掴んだ。
『グワァ~』
「肩の関節を外そうか?」
遠くから見てるだけでボウヤーって奴の骨が軋む音が聞こえそうだ。
相当の握力がないと出来ない芸当だ。
片倉先輩って…。
痛みのあまりやっと高坂先輩から離れた男は片倉先輩と向かい合った。
「Verschwinden schwein!(消えろ ブタ!」
殴った!お腹だ。相手のお腹に穴が空きそうなパンチだった。
「顔を殴って傷を残すのは素人さ。ボディーブローは地獄の苦しみ…。
膝を使って地面のコインを拾う感覚でね。
君には芝生とのキスがふさわしい。いや、芝生に失礼か。」
恐怖のあまり小刻みに震える高坂先輩を恵里菜が抱きしめる。
俺と小菅は大したケガもなかったけど…。
ようやく両チームの全員が集まり、事の重大さが明るみになった。
合同練習は打ち切られた
一番に宇都宮さんが駆け寄って、心配する。
「私は大丈夫だ…。それより片倉は…?」
「僕は平気だよ。すぐに助けられなくてごめん。」
「お、お前が謝るな、私が無茶な勝負するから…私のせいだ…。」
高坂先輩はその場で意識を失った…