「追いかけないんだね、まー君。
ちょっとは成長したのかな?」
「イタズラに里見さんを傷つけるようなことはしたくないからな。」
ううん、成長したのは私の方。
昔の私なら、里見さんがいつも以上に綺麗な外見でまー君と二人きりで話してる時点で、しかも『好き好きオーラ』出しまくりのあの態度を見た時点で彼女に飛び掛かり、自慢のツインテールを掴んで引きづり回してたに違いない…。
稀に女子サッカー部の練習に参加し、今日は試合にも出たことで私は変わったのかな。
まー君の気持ち、私の気持ちが何よりも大事だけど、他の女の子がまー君に恋することを私には止める権利はない…。
瑞穂に山名さん。それに好意的なクラスメートや生徒会員との不毛な争いのおかげで私は里見さんの恋の終わりを傍観することに成功した…。
あ~あ、まー君に言い寄る女がみんな里見さんみたいに物分かりのいい子なら私も楽なのになぁ(笑)。
まぁ、今後を見越してまー君が余計な恋の種を蒔かないように…。
「私に無理して『惜しいな』って、本当は思ってない?」
「思うわけないだろ!」
「そうなの?
里見さんって、隠れ巨乳よ」
「マジで?」
「バキッ!」
「やっぱり!まー君の、そういう、ところが、安心、出来ないの!」
内藤京子の苦労は続きます(笑)。
「やっとMVPのお出ましね!」
病院から会場に来た南部さん達が到着したことを聞いて、打ち上げパーティーが始まろうとする。
三好先生が台場に上がりマイクを握った時に、
「蒼磨様、止めて下さいませ!
降ろして下さい!」
「彩くん、君は右足を怪我してるし、今日の試合の殊勲者に違いない。
だからこの入場の仕方が一番だと思うけど。
断る理由はなんだい?」
「蒼磨様にこんなことさせれません。」
「僕達はもう恋人同士だ。
僕がそうしたいだけだよ。」
「しかし…。」
「しかし?」
「…恥ずかしい…です…。」
「うん、最初からそう言えば良いのに、でも君の意見は却下だ!」
「ヒドイです蒼磨様。」
一橋先輩と南部さんが姿を見せた瞬間、全員がキャーと声を上げる。
入口から会場の中央まで南部さんをお姫さま抱っこして現れたのだから当然だ。
「わ~、いいな~!」
「南部先輩カワイイ!」
「一橋先輩って、野球部OBなんでしょ?
どうりでウチの男子と毛色が違うの納得よねぇ。」
「私より背が低い優矢くんには出来ないかも…」