紅組ボールで自陣からのリスタート。
紅組選手が作戦を練る。
「由紀姉、凄いよ。オフサイドトラップなんて素人が狙って出来るモノじゃないよ…。」
「あら、佐竹くん。瑞穂と三好先生に鍛えられてる私達はみんな素人じゃありませんわよ。」
「…武田も中島も『待つ』タイプのフォワードだからな…。スペースに飛び出したりするのは苦手だからオフサイド狙いは効果的だ…。
全く、南部の身体能力ばかりに喜んでいたが、最上も大したディフェンダーだ…。」
「せっかくのチャンスですわ。ここは大事に行きますわよ、瑞穂。
彩とのマッチアップが楽しいのはわかりますが、まずは同点ですわ。」
「わかってる…。南部のあの気配を消して近づいて来るディフェンスが面白くてな…。
わかった。
遊びは終わりだ…。
小菅、茉奈。まずはお前達がギリギリまでディフェンスを引き付けろ…。
切り崩す前に私にパスすることは許さん…。
その後は任せろ…。」
武田がオフサイドになった位置からリスタート。
最上さん、佐竹とボールが渡り、茉奈ちゃんにボールが渡った所で山名さんが奪いに来る。
茉奈ちゃんは山名さんと対峙せず、小菅にボールを回す。
小菅はダイレクトで攻め上がる佐竹にボール回し、佐竹も直ぐに柳生ちゃんに回す。
ダイレクトパスの連続でゾーンプレスの狙いを絞らせない紅組の作戦だ!
「ちょっと、早すぎるわよ!
追いつく前にパスを出されちゃう!」
「落ち着いて!コースと飛び出しのタイミングを読むんだ!
ボールの出所は茉奈ちゃんと小菅だ!
俺は小菅を、山名ちゃんは茉奈ちゃんを!」
二人で一人のボールホルダーを攻めるゾーンプレスが分散した!
小菅はこの隙を見逃さなかった!
「ここだ!」
右サイドから必殺スルーパスが放たれた。
対角線上に左サイドの深くにボールが飛ぶ。
「柳生ちゃん狙いにしては長いわ!鳥居くんお願い!」
そのボールはまるで右サイドバックの鳥居の足下に収まるミスキックに思えた。
しかし、そこにはサイドに流れた高坂が居た。
ボールをトラップすると同時にタッチラインに向かって反転する。
この時点で背中で鳥居をかわしている高坂。
今や左ウイングとなった高坂がセンタリングを上げる。
「片倉さんしか前線にはいない!」
南部さんがマークに入るがそれは高坂得意の手前で落下するパスだった!
ニアの死角から柳生ちゃんのダイビングヘッド!
「入れ!」