「真樹ちゃん待ってよ!」
「止めるな柳生。
…宇都宮の為だ。」
「瑞穂、私が宇都宮さんと話しますわ。
止めても無駄ですから。」
「最上、相変わらず甘過ぎだ…。だから自立心が…。」
後で聞いた話ですが、その時の真樹ちゃんのロッカールームでの暴れぶりは普通じゃなかったみたいです。
真樹ちゃんの命ともいえるギターを、自分の手で壊そうとした所に最上先輩が身を呈して止めたそうです。
「どうしてそんなことするのかしら?
それは宇都宮さんの大切なギターでしょう?」
「もう終わりなんです!
こんなギターなんかよりずっと大切な人に全てを否定されたんです!
私なんて何の価値も無い人間なんです!」
「あら、宇都宮さんが誰よりも瑞穂を慕ってた気持ちはわかりますわ。
でも、瑞穂を悲しませることは止めなさい。」
「恋人が居て、男子からも女子からも慕われてる最上先輩にはわからないんです!
…本当は…バレンタインに告白してこの片想いを諦めようと思ってました。
でも優しく私の告白を聞いてくれて、自分の思い出話まで話てくれた高坂先輩を余計に好きになったんです!
実らない恋でも想い続けようって思った矢先に…。」
「まぁ、独りで悩み続けて辛かったのですね。
でも、決断を急ぐことはありませんわ。
今日は泣くだけ泣いて、また明日出来ることから始めましょう?
今日がスタートっだったんだっていつか思えるように…。」
「最上先輩…。
ウ、ウアァーン…。」
「瑞穂には私から言っときますわ。
今日は帰りなさい。」
「ありがとうございます最上先輩。
思いっきり泣いたら少し楽になりました。」
「恋に悩むのは貴女だけじゃありませんわ。
私だって最近は彼の受験が心配で…。」
「えっ?先輩の彼氏さんって三年生だったんですか?
確かにこの時期ナイーブになりますよね?
大学どこ受けるんですか?」
「あら、同じ三年生でもまだ中学生ですわ。
来年ウチに入学出来るか心配でして…。」
「まさかの年下…!」
「真田!課題戦力の底上げに、男女混合の紅白戦をするのはどうだ?」
「混合かぁ、今まで連携を高める為に、男子vs女子を中心に練習してきたからなぁ。
いいんじゃないか?一年レギュラーの小菅や相良にも良い経験になるし。」
「控えキーパーのお前には審判をしてもらうがな。
それと、明日もしも宇都宮が来なかった時の為に一応京子を控えさせておいてくれ。」