「まり姐、最後に一つだけ教えて下さい…。
何故、貴女はそんなに強くいられる?
秋彦を失った哀しみは貴女の方が大きいのに…。」
「漣…。
取りあえず先に服を着てね…。」
「…話すと夢中になるのは兄妹そっくりね…。」
「私は…。
自分が強いか弱いかなんてわからないわ。
でも私は独りじゃない…。
『生徒が居るから』って教師らしく答えたいけど、女として『愛されてるから』って言っとくわ♪」
「想い人が居るのですね…。
結婚式には呼んで下さい。
ドイツから飛んできますよ…。」
「あら?今日かもしれないわよ?
ねぇ、徹?」
言った!三好先生は皆に聞こえるように明らかに「徹」と言った!
何やってんだよ!今までせっかく俺と京子が守ってきた二人の秘密を…。
三好先生の声に反応した榎田も、先生に近づき…。
「真理亜、俺が力になれているなんて…。嬉しいでよ…。
でも、本当にいいんだな?」
さすがに周りも不審に思いザワツキはじめる…。
「ちょっとどういうこと?」
「先生のこと『真理亜』って言ったよね?」
「うん、確かに聞いた。女として『愛されてる』って…。
それってやっぱり…。」
「皆、聞いてくれ!
俺と三好先生は一年以上前から付き合っている!!
俺が18になったら直ぐに結婚する!
今日は創部記念を兼ねてみんなその事を知ってほしくてパーティーを二人で主催したんだ!」
キャーとの叫び声が挙がる。
山名さんや漣兄さんの時とは比べものにならない驚きの声だ。
「貴方達には…私達のことを知っててほしいから。
もう、自分に正直に生きようって、私と徹で決めたのよ。」
「せっかくなら、思い切り派手にしようってことで、今日この日になったってわけさ!」
「榎田先輩…。だからパーティーに誰も同伴者を…。まさか三好先生とだなんて…敵わないや…。」
俺と京子の唯一の不安要素、結城翔子ちゃんは堪らずホールを飛び出した。
何事も無いように自然にお手洗いに行く仕草を宇都宮さんと里見さんに伝えたのが彼女の精一杯の強さだった。
無理もない、だが俺は先生と榎田の気持ちも大事にしたい。
「まー君大丈夫よ、翔子ちゃんは私に任せて。」
京子だけが結城さんの後を追う。
一瞬、渦中の二人が不安な視線を送ったが、俺は「気にするな、続けて」の視線を返す。
榎田と三好先生は皆の前で永遠の愛を誓い、熱い熱いキスをした。
(次回最終回)