はっきり言おう。
俺は肉体的には一般人だ!
一瞬で相手を気絶させる首の絞め方なんて出来るわけないし、ましてや三好先生の様に真っ暗闇でも平然と標的を目指して投げ技を披露し、灯りが着くまでに高坂の兄を気絶させるなんて俺には到底無理!
だから文字通り闇雲に高坂を救出しようとして、山名さんのスカートを踏んでしまい、その勢いで山名さんを押し倒してしまっても不可抗力だ!
榎田の奴も最悪のタイミングでブレーカーをONにするから…。
「キャー!!イヤ、視ないでー!!」
倒れそうな俺が無意識に伸ばした手の先には山名さんの豊満な胸があったワケで…。
肩出しのドレスがあんなに脱げやすいなんて知りませんでした。
はい、どうせ俺が悪いです!
「まー君のバカ!エッチ!
正義のヒーローや王子様は格好良く敵を倒すんじゃないの?
暗闇で躓いて女の子のドレスをずり下ろすなんてサイテー!」
「イヤ、電気が点くのが意外と早くて…。」
「もっと暗闇が続いてたら山名さんの体触り放題だったのにそれは残念でしたね!」
「決闘に停電に脱衣ハプニング…。
やれやれ、とんだ創部記念パーティーね!」
三好先生が気絶させた高坂の兄に膝枕しながら溜め息をつく。
「…漣…。貴方あれから全然変わってないのね…。」
「先輩のお兄さんって、停電中に転んで気絶したの?
それとも山名さんの裸を見て失神?」
「ウソ?そのギャップが素敵!実は純情青年だったなんて…。」
「決闘はこれで終わりなの?キスシーンは?」
「はい、皆、静かに!倒れてる人の前で不謹慎でしょ。
余興はここまでよ!
漣は少し安静にしてれば目を醒ますから。
榎田くん…ありがとうね、貴方の機転で助かったわ。」
「真田の指示に従っただけさ。
だが、先生、そろそろ話してくれないか?」
「…私も聞きたいぞ…お兄様と先生が知り合いなんて初耳だ…。」
「『漣、まり姐』って呼びあう関係ってもしかして…。それに柚葉さんて?」
いち早く「あの人物」に気付いたのは京子だった。
そして遂に三好先生が重い口を開いた。
「漣はね…。死んだ私の弟、三好秋彦と野球部のバッテリーを組んでたのよ…。
上杉柚葉と三人はいつも私を『まり姐、まり姐』って慕ってくれて仲良しだったわ。
でも、ある雨の夜、バイクで出かけた秋彦はカーブを曲がり切れず、二度と帰って来なかった…。」
俺達は見た。
三好先生が流す涙を…。