「真田くん、君に与えられた選択肢は三つ。
1.内藤さん意外とキスをする。
2.内藤さんと私がキスするのを見守る
3.どちらも出来ないと私に謝る
か、です。
『君は愛故に汚れた愛をも貫くことが出来るか』?
実に見物です…!」
瑞穂の兄、高坂漣は勢いに乗って饒舌に語るが、俺は冷静さを保つ。
「まー君、相手のペースに乗っちゃ駄目。何一つ言うこと聞かなければいいだけよ!」
京子の言う通り!
相手は俺がどれを選択しても、「愛の裏切り」を感じさせることで溝を入れたいのだろう。
俺には一つの確信がある。
この男、高坂漣がもし、俺の知恵も力も及ばない奴なら、もう既に京子にキスくらいしてるはず。
だからこそ古からの解決不能な命題を持ち出して俺に謝らせたいだけでは?
大袈裟なパフォーマンスも、ただ観衆を味方に着けたいだけなら…。
(有無を言わさず、殴り合いでケリを着けるか!)
と思った時、想定外のことが起きた。
山名さんだ。
「うわぁ、面白いですぅ。真田くんは誰にキスするのかなぁ~?
これはパーティーの余興、オフザケなんですから先生も皆も本気になっちゃ駄目ですよ~。」
と、表向きには高坂瑞穂にじゃれついて後ろから抱き着いたように見える。
が、山名さんの手は、高坂の首の頸動脈 確実に抑えていた。
多分、三好先生の絞め技を盗み取って自分のモノにしたのだろう。
遠くから三好先生が(動いちゃ駄目!)のアイコンタクトを送ってくる。
(山名、どういうつもりだ。)
(抱かれたいと思った男の力になる、それ以上の理由ありますか?私、貴女を気絶させることくらい簡単なんですよ。)
高坂漣の「心理戦」は山名さんの「乱入」により、一気に「高坂瑞穂を人質にキスの要求」の図式となった。
勿論、気付いてるのは俺達だけだ。
「まー君、駄目、キスされる相手に傷を創っちゃ駄目…。私が犠牲になるわ。愛してるから…我慢するわ…。」
「京子…。」
勝算はある。
俺はこのパーティーの輪の中から外れてた榎田とずっとアイコンタクトをしてたことだ。
(やれ!)
の合図を送ったと同時に
「ガタン」
と音が鳴り、ホールが闇に包まれる。
「キャー!停電?」
弾かれた様に三好先生が暗闇の中でも迷うこと無く、奴に投げ技をお見舞いする。
俺は山名さんの手が離れた隙に高坂を救出するはずが…。山名さんのスカートを踏んづけた所で榎田がブレーカーをONにしやがった。