「わ、わた、私ですか?私は、その…お料理の話を…。」
「うわ~、柳生ちゃん、舞い上がってるよ~。でも、無理もないか、いつも追いかけてばかりで、迫られたことないもんね~。」
食事と談話に夢中になってた他の部員も、一気に柳生さんと瑞穂のお兄さんのやり取りに注目する。
「ええ、柳生さん、貴女の様に料理しやすい女性は大好物ですよ…。こんな風に…。」
「ああっ、そ、そんな…。」
カランと、柳生さんが握っていたトングが床に落ちた。
そして柳生さんもお兄さんにいきなり強く抱き締められて堕ちた…。
「嫌…さっきまで内藤先輩に迫ってたのに…。
ヒドイです…。」
「ヒドイ?よく言われます。離れてほしいですか?」
「わかってるクセに…。意地悪ですよ…。」
「それも良く言われます…。」
何、あの男!もう我慢出来ない!柳生さんの言う通りだわ!ロビーで私に言った言葉は何なのよ!
よくも「一目惚れ」だなんて…。
一発殴ってやると私が動くより先に、まー君が漣さんの襟首を掴み、柳生さんから引き離す。
「あんた、どういうつもりだ!
そんな態度でさっきはよくも『俺の』京子に近づいたな!」
無言のままで漣さんはまー君を睨み返し、暫く二人の沈黙が続く。
会場の皆も二人に注目する。
まさかケンカにはならないよね?
三好先生も居るし…。
「…瑞穂の話通りのお人ですね、真田正行くん…。抱えきれない正義ほどの悪は無い…。
いいでしょう…。
古典的なのは趣味に反しますが…。」
と、漣さんは身に付けていた白い手袋をまー君に投げつけた。
「決闘と解釈していいんだな?」
沈黙してた皆が一斉に沸き上がる。キャーとかいいぞや、やれやれと聞こえてくる。
「…勿論、サッカーや殴り合いでは私に分がありません…。ここは君も私も一番得意な『心理戦』はどうですか?
瑞穂のPK戦の話は存じてます…。」
「べ、別に構わないがどうやって決着を着けるんだ?」
「簡単なことですよ…。君はきょ…内藤さんを愛してることを証明すればいい。」
「何それ?そんなのキスしたらいいだけじゃない」
周りから最もな声が飛ぶ。
恥ずかしいけど、それでまー君の勝ちが決まるなら…。
「確かに愛の証明にキスは最適ですね。
真田くんには内藤さん意外とキスをしてもらいます!
愛があれば他人との一度のキス位許せるはずでは?
出来ないなら私が内藤さんの口唇を頂きます…。」