「私は君にとても感謝しています。」
漣さんの意外な言葉に、私とまー君の警戒が解ける。
「小学生の時は男の子を泣かしてばかりいた、我が妹にまさか恋人が出来るとは…。真田くん、本当にありがとう!」
「昔の話は止めろ!真田と別れたことも、小学生のことも過去のことだ!」
恥ずかしそうに漣さんの話を遮る瑞穂に周りからはクスクスと笑いが起きる。
「では、もっと昔の話が良いですか?
あれは瑞穂が幼稚園の時、怪談番組を観てたら怖さのあまりおも…。」
「ワー!ワー!違う、違うぞ!
そういう話をしない約束で仕方なく連れて来たんだろう!」
必死に話を否定する瑞穂。
確かに兄妹ってこうゆう弱点握られることあるよね…。
「あの、お兄さん。で、俺に話とは?」
あまりに恥ずかしがる瑞穂を気にしてか、まー君が話を元に戻す。
「そうでした。真田くん、あなたに秘密のお願いがあります。
京子さんを私に下さい!」
「ど、どういうことですか?」
さすがのまー君をそう聞き返すのが精一杯だった。
「言葉の通りです。実は瑞穂の話を聞く度に京子さんに抱く想いは募るばかり…。
そして今、目の当たりにして確信しました。
一目惚れというやつです。
あっ、これは秘密ですよ。」
「全部聞こえるように話す秘密がありますか!冗談は止めて下さい!困ります!私はまー…真田くんを愛してます!」
この強引さは初対面の時の瑞穂とそっくりだわ!全く兄妹揃って何て迷惑な…。
「そうです!俺と京子は愛し合ってます。笑えない冗談は止めて下さい。」
「…貴方達の気持ちは大変良くわかりました…。
では、こうしましょう。
瑞穂をどうぞ差し上げますので、京子さんを下さい!」
「全然わかってないじゃないですかー!」
まー君と私二人同時に突っ込む。
何て人?想像の範囲を軽く越えてるわ…。
「止めないか、お兄様!女を見るといつもいつも…。」
「何だ?瑞穂、兄の恋を応援してくれないのか?私は応援してるのに…!
京子さん、私は駄目ですか…?」
「駄目です…!あと、なるべく名字で読んでくれませんか?」
「駄目ですか?」
「駄目です!」
「……瑞穂を…」
「しつこい!」
こんなやり取りを制したのは三好先生だった。
「ホールの準備が出来たわ。
漣!それくらいになさい。
柚葉(ゆずは)を困らせることしないの!」
先生の知り合いなの?
「…まり姐…」