ホールの準備が整う間、私達の話題の中心は瑞穂のお兄さんに集中した
「全く、私を歓迎してないフリをしながら、私が用意したドレスをしっかり着こなしているではありませんか?」
「この瑞穂さんのコーディネートってお兄さんがしたんですか?凄い!」
普段なら呼び捨てにする中島さんもちゃんと瑞穂に「さん」を付ける。
瑞穂の兄、漣さんは落ち着いていて、紳士的な口調だ。
まー君が「暖かい優しさ」の雰囲気なら漣さんは「繊細な優しさ」の雰囲気だ。
「それはお兄様が、私を寝てる間に車に押し込んで、この服しか着れないようにしたからだろう!」
えっ?まさか紳士的って私が心の中で言ったこと撤回しなきゃいけない人?武田くんと同類?
「私は別にスクール水着を着せても良かったのですが、瑞穂がこっちの方がいいと自分から…。」
「当たり前だ!そもそも私が寝てる部屋に入るな!高校生の妹にすることか!」
「妹だから出来るんじゃないですか(笑)。
赤の他人にはとてもとても…。」
うわぁ武田くんより凄いかも…。これは兄妹似てるっことなの…?
それにしてもこんなに取り乱す瑞穂って?よっぽどこのお兄さんが苦手なのね。
兄と聞いて安心した表情を浮かべる小菅くん。その表情を見て落胆する柳生さん。
皆いろいろだなぁ。
「あの、お兄さんもサッカー上手いんですか?」
「ドイツ語ペラペラなんですか?」
「大学で何の研究されてるんですか?」
「彼女居ませんよね?私をどう思います?」
女子達から質問責めに合うお兄さん。
最後の微妙に聞き方がおかしい質問をしたのは勿論、柳生さん。たくましいなぁもう…。
「私の恋人は顕微鏡ですよ(笑)。細胞学と遺伝学を専攻してますが、趣味と実益を兼ねて日々、女性の神秘の解明を…(笑)。
面倒なことは全部助手に任せるので語学は未だに上手くなりません。才能豊かな妹が羨ましくて…。
ところで、こちらの和服の女性はもしかして…?」
女子に囲まれていた漣さんは私とまー君に視線を移し、
「貴女が内藤さんですね。瑞穂から話は聞いてます。妹はいつも貴女達の話ばかりを…。という事は隣のサムライが真田正行くん…?良かった、君にはタップリと聞きたいことが…。」
「京子、俺、まさか…?」
「うん、瑞穂の伝え方にもよるけど、普通は妹が二股の末に捨てられたって聞かされてたら、今日がまー君の命日になるわね。
頑張ってね♪私は何もしないけど♪」