「結城翔子です。同伴者は居ません!」
兼任サッカー部の宇都宮と里見はそれぞれバンド仲間、漫研仲間を同伴しだが、
私はこれでいい。私は今、受付で自信を持ってそう言えた。
京子さんから
「榎田くんは誰も誘わない」
って聞いた時は安心したけど、
「誰も」
ってことは
「私も誘われない」
って理解したら泣いてしまいました。
でも私は先輩と練習出来るだけで幸せなの♪
京子さんの話をしてたら早速…。
「真田正行です。同伴者はこちらの内藤京子です。」
藍色の振袖に身を包んだ京子さんは、清楚で奥ゆかしく、質実剛健な日本女性そのものだった。
「翔子ちゃんも今来たの?」
「はい、京子さん素敵です…。和服の発想はなかったな~。二人で和装カップルなんていいな~。」
「京子が俺もってうるさくてな。」
「男どもはどうせムダ乳女の露出にしか期待してないんでしょうから。
私は書道部らしく私のフィールドで勝負するの。」
「あら、ムダ乳女って誰ですか~?」
背中部分と胸元が大きくカットされたドレスを着た山名先輩が京子さんに詰め寄る。
「貴女意外に誰が居るかな~?露出魔の略奪女って言った方が良かったかな~?私、貴女のこと許してないし!」
無視して受付に行く山名先輩。
「山名理恵です~。同伴者は…そんな一人になんて選べませんよ~。私はみんなが大好きですし~。」
一部に噂があった山名・小菅ペアは成立しなかった。
傷心の小菅くんは何とあの柳生さんに押し切られ一緒に出席した。
そして小菅くんに傷を負わせた張本人が遂に登場した。
真っ白なドレスに、亜麻色のセミロングをポニーテールにした頭には小さなティアラがあった。
「高坂先輩、可愛い~!フランス人形みたいー!写真いいですか?」
高坂先輩に惹かれて入部した宇都宮と里見が歓声を上げ、
「で、噂の同伴者様は?」
と質問が飛ぶ。
先輩の後から車を下りた長身のタキシード男性は軽く私達に頭を下げ、
「こら、瑞穂。ちゃんと私をこちらのレディー達に紹介しなさい。」
「先輩を呼び捨てにするこんなカッコいい年上彼氏が居るなんて…笑顔と眼鏡が…爽やか過ぎる…」
「オイ、勘違いするな。私の兄、高坂漣(れん)だ。」
「お、お兄さん~!?」
「今日は瑞穂の大切なお仲間とのパーティーと知り、ベルリン大学の研究室から飛んで参りました。瑞穂が是非、私に参加してくれと…。」
「…私から頼んだ憶えはない!」