意地を賭けた不毛なる争い了
見習いキーパー・結城翔子の場合
「いい感じだよ、結城さん!
じゃ、俺は明日からは会議があるから。あとは榎田に任せるよ。」
「ありがとうございます、真田先輩。」
俺は女子のキーパー結城さんを榎田と交代で指導してる。
キーパーという特殊なポジションを、高坂一人で指導するには限界があるから、俺と榎田が女子部に出向いてコーチしている。
「あの、真田先輩…。絶対に秘密を守ってくれますか?榎田先輩のことなんですけど…。」
「どうしたらいい京子?悪いが俺には結論が出ない。」
帰り道。京子と二人で結城さんのことを話した。
結城さんは単純に
「榎田先輩が誰かを誘う予定あるとか知ってますか?」
と聞いてきただけだった。
「…全部本当のことは言えないわね。」
そう、榎田が三好先生と付き合ってることを言うわけにはいかない。
だが、榎田のファン達の目を反らす為にも結城さんは適任かも。
先生との秘密を守る為にも、
「結城さんをパートナーとして誘え。」
と言うべきかもしれない。
結城さんの好意は明白だ。
俺の指導と、榎田の指導の時の態度を見ればわかる。
「別にただのパーティーなんだし、それで結城さんが喜ぶならいいんじゃない?」
と言った京子の言葉に納得し、それとなく俺は榎田に言ってみた。
が、
「断る。理由はどうあれ、俺は真理亜(三好先生)意外の女を認めない。たとえ、同伴出席するだけでも駄目だ。」
そこには頑な決意があった。
あまりに結城さんの気持ちを無視した言葉に俺は思わず、
「だったら三好先生とのこともハッキリさせて見せろ!」
と思わず言ってしまった。
俺と京子だけで秘密を守る苦労を全く榎田は気にしていない!
「二股男に何がわかる!そういうお前の甘さが高坂ちゃんを傷つけるんだろ!」
「やるか!」
「あん時のリベンジしてやるよ!」
昼休みに榎田のクラスで乱闘がはじまった。
「まー君も榎田くんもやめて!キーパーの手はチームを守る為にあるんでしょ!
そんな二人が結城さんを指導しないで。」
単純な殴りあいでは榎田に惨敗だ。
「まー君のバカ。結城さんには『榎田くんは誰も誘わないし、誰の誘いも受けない』って言っておいたわ。
あの子、私の前では泣いてたけど、その後ちゃんと榎田くんのコーチを受けたわ。
どこかのバカ二人より強い子よ。
でも、私、榎田くんの態度が不自然な気がするの。」