意地を賭けた不毛なる争い2
両キャプテン・武田、中島の場合。
「信じられない!あたしという者がありながら、何で他の女を誘うわけ!!」
武田主将がテニス部の女子に声を掛けたから中島先輩の怒りは爆発した。
しかも、発覚の仕方がその女子から直接中島先輩に、
「ホントにいいんですか?」
と聞いてきたから最悪だった。
「イヤ、恵は自分のチケットあるし、テニス部の陽子ちゃんが来てくれたら男子は嬉しいし…。俺達お世話になったし…。」
「お世話になったのは男子限定の練習覗きでしょ!!あたし達はパートナーなの!二度と浮気しない様に、あたし今すぐダーリンのチケットにサインするから、ダーリンもあたしのチケットにサインして!!」
そう、後日、三好先生から部員一人に一枚、本格的な創部記念パーティーのチケットが配られた。
チケットには部員の名前が記してあり、その下の空白は同伴者の名前の記入欄だった。
各自ドレスアップ、場所は榎田邸別館。どんなパーティーになるんだろ?
武田、中島両キャプテンのこの一件により、内輪の場合はお互いのチケットにサインするという慣習が生まれ、
「パートナーとしてサインして下さい。」
が合言葉となった。
それは独り身の男女サッカー部員にとって、
「とりあえず参加してから仲良くなる」
ってことをやりにくくした。
トラブルメーカー・伊東兄妹の場合
均衡を破ったのは意外な人物だった。
「小菅、答えろ!お前は誰を同伴する?」
それを聞いてた私達は
「…物凄い直球ね…!。ある意味羨ましいけど…。高坂先輩の方から?みんないつ小菅くんが『僕のチケットにサインして下さい』って言うかと思ってたのにー!」
「高坂先輩にその気はないわよ、ただ聞きたいだけだって。」
予想通り、不意を突かれた小菅くんは動揺する。
「ええと、あの、僕は別にまだ誰とも…。(言うんだ、健吾チャンスだろ)。」
と、その時、小菅よりも一足早く伊東兄が
「瑞穂ちゃん、良かったら俺のチケットにサインを…。」
「えー意外?!伊東先輩がキター!」
「ヤダ…。お兄ちゃんが高坂先輩を…。」
「…悪いが私の同伴者はもう決まってる。
…それにお前なんぞに下の名前で言われる憶えはない。
誘いは嬉しいが他を当たれ…。」
伊東兄、伊東茉奈、そして小菅健吾。
高坂瑞穂のこの言葉から暫く立ち直れなかった。