「今日は祝いの席よ。
だからまずは楽しむこと優先にしてね。
後で貴方達にだけ、本当のこと話すわ。」
三好先生に言われ、私達はホールに案内された。
「あれ?でも榎田先輩は?」
翔子ちゃんが心配そうな顔をする。
「榎田くんは今回のホスト役よ。
既に中で準備してるはずよ。」
「そっかぁ、ここ榎田先輩の家ですもんね。大きすぎて現実感ないや…。」
そこにはバイキング形式で世界各国の高級料理が並べられ、食べ盛りの高校生の興奮を誘った。
そしてステージに現れた彼は皆に挨拶する。
ワインレッドのタキシードに身を包み、自慢の長髪を束ねた榎田くんが居た。
髪を束ねるだけで普段と印象が変わる。
私の隣の翔子ちゃんの目がハートになってるわ。わかりやすいなぁ。
「みんな、取りあえず適当に席に付いてくれ。」
男女の部員と同伴者合わせて30人半ばが6人ごとくらいのテーブルに分かれて座る。
瑞穂のお兄さんの隣をゲットしたのは勿論、柳生さん。反対側の隣は山名さん。
私にお兄さんがアプローチしたのを見て動き出す所はさすがだわ…。
でもバイキングだから席は流動的。
その辺りがポイントかも。
皆が着席した所で榎田くんの挨拶が始まる。
「本日は榎田邸別館にお集まり頂きありがとうございます。
私、本日の進行をさせて頂きます当館の主、榎田徹でございます。
北条学園女子サッカー部の設立記念パーティーに、我が榎田グループが協力できたことを誇りに思います。」
「当館の主って、あいつ個人の持ち物かよ!」
武田くんが最もな驚き方をする。
「…榎田グループ…凄いなぁ…。私なんか、とんでもない人を好きに…。
そうですよね。先輩のこんな姿見たら、またミーハーファンが…。誰も誘わないのはこういう意味だったんですね。」
翔子ちゃんが気後れする気持ちも分かるわ。
でも…問題はそこじゃないのよね。
「では、堅いことは抜きにして、乾杯の音頭は我がサッカー部の両キャプテンにして、学園のベストカップル、武田輝、中島恵にお願いします!」
榎田くんの紹介でステージに上がる二人。
「え~と、2ヶ月前まで適当に毎日過ごしてたあたしが、素敵な彼氏と主将のポジションていうかけがえのないモノ二つを手に入れれたのは、小さ巡り合わせと、小さな勇気のおかげと思います。
この出会いと、私達の未来に…乾杯!」
「カンパ~イ!」
「オイ、恵、俺の台詞は?」